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理由を聞こうか、面倒くさいからやめておこうか、坂木さんの顔を見ながら考えていらたら、坂木さんが先にしゃべりだした。 「恩地さんが結婚してるみたいで嫌だ。」 私はまた、ため息をつく。 「(いち)、結婚指輪は左手の薬指。()、私が結婚してたとして、坂木さんに嫌がられる筋合いはありません。」 「へぇ、左か右か、決まってるんだ。」 「嘘でしょ?知らなかったの?」 「知らなかった。」 「え?男の人ってそんな感じ?」 「どうだろ。」 「坂木さんだけがそんな感じ?」 「どうだろ。」 私は天井を見上げて、この虚しい会話を一旦、区切る。 たぶん、坂木さんだけがそんな感じ、のほうだと思う。
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