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『チャンスだぞナナミ』
突然、アクエリアスがそんなことを言った。
アクエリアスの声に前方を歩くブルーの様子を窺った。
が特にアクエリアスの声に気づいている様子はない。
おそらくブルーには聞こえないよう私にだけ話し掛けたようだ。
アクエリアスの言うチャンスとはあのことである。
昨日、ブルーに訊けなかったひと言だ。
「ん、どうかしたか?」
アクエリアスの変なお節介にたじろいでいると、ついてこない私に心配してブルーがこちらを振り返った。
「…ううん、何でもない」
と早足でブルーに追いつく。
すると、抱えていた剣が少し暴れた。
分かってるわよ…言うけど、私にも心の準備ってもんがあるのよと心中で文句を垂れる。
しばらくは普通にブルーの買い出しについていく。
途中、何度もアクエリアスが動いて私に催促をするもんだから、ブルーが見ていない隙を狙ってわざと床に剣の柄をぶつけた。
…分かってる。
アクエリアスはあくまで私の心配をしてくれているのだ。
その質問をしないままファーシル城に着いてしまったら、きっと私が後悔してしまうからだろう。
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