1.七つの海

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聞こえる… それぞれの海が奏でる音が私の心を一気に飲み込んでゆく。 そして、私はその海があるであろう世界へと旅立つのだ。 その世界では私は自由だった。 空を自由に飛べるし、海の底だって簡単に行ける。 どこだって自由自在。 何一つとして世界は私を拒まない。 まるで、その世界によって私がつくり出されたかのように、世界は私を優しく包み込む。 世界を隅から隅まで飛び回る。 楽しい…! まるで心が洗われるようだ。 やがて、妄想という幻の効果が薄れてきた時、ショーウィンドウに映る自分の顔によって現実へと引き戻された。 三つ編みヘアと眼鏡姿、地味で冴えない顔…それが私だ。 なんとも情けなく弱々しい表情でこちらを見ている。 私は自分のこの顔が堪らなく嫌いだ。
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