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ここは町外れの丘の上にある骨董品店。
辺りには青々とした木々が生い茂っている。
高校からの帰りによくこの骨董品店に訪れ、こうして店のショーウィンドウに飾れている七つの海の絵を眺めては妄想に浸っている。
下校帰りと言っても帰り道にはなく、それなりに寄り道をしないと行けない場所だ。
夏が過ぎて制服が長袖に戻るこの時期は、店のショーウィンドウの前に立って絵を眺める時間が随分と心地よくなった。
ただその分、日が落ちるのが早くなったので、暗くなってしまう帰り道に少し不安を感じる。
「いらっしゃい七海さん」
ショーウィンドウに映る自分の顔の後ろにふと誰かの顔が見えた瞬間、背後から声がした。
少し驚いたけれど、知っている声にすぐに安心感を覚えてゆっくりと後ろを振り返る。
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