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「少ないですが、クロフォードの旅の資金です」
テッドさんの言葉に伸ばした手を引っ込めた。
すぐに貰えませんと口に出したかったが、正直無一文の私が言える台詞ではない。
困った私は隣のブルーをチラリと見て助けを求める。
「お気持ちは有難いですがそれは仕舞ってください。クロフォードを旅に誘ったのは我々です。ですので、旅に掛かる資金も当然我々が負担することです」
ブルーが手で受け取らない意思を示す。
「…ですが、それでは私の気が収まらない。この子には何もしてやれなかった。ニコルにクロフォードを頼まれたにも関わらず…親友の最期の頼みすら叶えられない愚かな自分が許せないんです。ですから、せめてこれだけでも…」
テッドも引き下がらない。
その言葉から半年間の後悔が滲み出ていた。
「それでも、あなたには守らなければならない家族がいる。クロフォードのことは我々に任せてくれればいい。だから、あなたはあなたの家族を一番に考えるべきだ。ニコルさんもそれは分かってくれる筈ですよ?なっ、クロフォード?」
ブルーがテッドさんの後ろにいる家族を見たあとで、クロフォードに視線を落とした。
「当たり前だ。父ちゃんは凄く優しいからな」
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