崩れかけたカタチ

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「私、苦しかったんだよ」  私が、娘の首を絞めた?  全然覚えていない。  私は、殺すつもりだったのだろうか。  イライラを娘にぶつけていたのか?  兎にも角にも娘の言ったことは事実のようで、紅い痣が首にくっきり残っていた。 「ご、ごめん……」  私は思わず我に返る。 「お母さん、にこにこでいてよ」  うるうると涙目になる我が子。  そうして私の手から缶を奪うと、キッチンの流し台にどぼどぼと流し始めた。  こんなんじゃ……ダメだ。  社会的立場どころじゃない、家のなかでも母親失格だ。    私は自分のしたことに、そしてそれを忘れていたことに、半ば放心していた。    そして、スマホの検索窓に“生活保護”と入れた。  たくさんの差し伸べる手がそこにはあった。    なにも恥ずかしいことじゃなかった。
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