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「小野田は俺を縛り付けるのに最も効果的な方法を選んだわけだ。俺は警察の手ごまとして、小野田を追い掛け続けなければならない。そのためには逃げも隠れもできない。小野田は常に俺の動きを把握できることになる」
晴人は本を閉じると、河北については触れずに小野田についてだけ述べた。それが愛海の不安を大きくする。それは晴人の心がすでに小野田に囚われてしまったかのようで怖かった。
「緒方さん」
「ふっ、心配している顔だな」
晴人は愛海が何を不安に思っているのか気づいているのだ。ふっと笑うと、そうからかってくる。
「解っているなら」
小野田のことは考えないでくれ。あいつの存在なんて忘れてしまってくれ。
思わず、愛海はそう懇願しそうになっていた。しかし、それは晴人が警察に協力する意味と矛盾することだと気づき、ぐっと堪える。
愛海の願いは晴人の望みと真逆で、小野田と同じく、晴人の居場所を奪うものだろう。自分の力を自分望む形で使いたい。そう願って、こんな目に遭ってもまっすぐ進んでいるのが緒方晴人なのだ。
それでも、止めたい気持ちが大きくて、悔しくて唇を噛んで下を向いてしまっていた。
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