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自分がとても情けなかった。晴人が怪我することから守れず、そればかりか、晴人の心に大きな傷が残る場面でさえ、見ていることしか出来なかった。河北の手がずっとポケットに入っていたことに気づいていたのに、何もできなかった。
自分にもう少し事件を解決する力があれば。
この一か月、何度そう思っただろう。
「大丈夫だ。俺は小野田に屈服しない。目の前で河北が殺されかけたことで、よりその決意は強まったよ。あいつはWIOなんかよりよっぽど危険だ。あいつがWIOをより凶暴なものに変えたのだろう。思えば、あの三百億の詐欺事件も不自然だったからな。俺が思っている以上に、あいつは暴走している。そう考えると、小野田は昔から俺のためと言いながら危険なことをやっていたはずだ。俺が警察にいる限り追ってくるというのならば、俺は逮捕するために待ち構え続けてやる」
そんな愛海の頭を、あの時のように晴人は優しくぽんと叩いた。そしてにこっと笑顔を見せてみせる。それに愛海は子ども扱いするなとその手を振り払いつつ
「逮捕できますか」
と真っすぐその顔を見つめて聞いていた。
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