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――コンテストの締切まで時間がないーー
日常の出来事を記録するテクストコンテストの締切が明日に迫っていた。
いつどこで何をしたか、事実を正確に記述することが評価されるコンテストなのに、ここ数日間、何の情報も入力することができていなかった。
前回のコンテストでは佳作を受賞していたため、今回はより良い成績をおさめたいと考えていた。
無人駅の改札を通り過ぎると、目の前には白い波が打ち寄せる海岸が望めた。
――私はホームの白線のすぐ後ろに立ち、前方75メートル先にある砂浜を観察しました――
頭では考えていても、文字を打つことができない。まるで冷たい機械を頭に入れたロボットになったような気分になり、指が思うように動かなくなっていた。
まもなくして自動運転の上り電車がホームの前で静止した。ドアが開くと車内に足を踏み入れ、一番隅にある仕切りに持たれかかるように座りこんだ。下校時間のはずなのに、乗客は誰もいない。
ポケットに入ったホワイトホンを再び取り出し、上体を屈ませて白い画面をぼーっと見つめる。単線で一駅の距離が短いので、隣駅にすぐに到着した。
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