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「えっ。それって⋯⋯」
「結婚しよう。夏美」
「でも、何にも縛られたくないって⋯⋯」
夏美は戸惑いの表情を見せた。
それから、あからさまに顔を曇らせる。
「そばにいてほしいんだ。この先もずっと」
「無理してない? 今回のことで、健吾を責めたかったんじゃないよ」
「これは俺の本心だよ。これまで夏美の気持ちに向き合えなくて、本当にごめん」
「健吾⋯⋯」
「今日、夏美がいない部屋で考えてたんだ。目の前から夏美がいなくなったらどうしようって。すげぇ怖くて。今までの人生で感じたことないくらいの恐怖だった」
「どこにもいかないよ、わたしは」
「夏美を幸せにする自信はまだないけど、ずっとそばにいたいんだ。⋯⋯そんな理由じゃ、だめかな」
夏美の目から溢れ出す涙。
ぽろぽろと落ち続ける涙は綺麗だった。
「健吾のそばにいられるだけで幸せだよ」
「ったく、夏美は泣き虫だな」
「ずっと泣き虫だよ。それでもいいの?」
「そんな夏美がいいんだよ。⋯⋯おいで」
手を広げ、夏美の全てを抱きとめる。
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