彼女の覚悟

4/5
前へ
/15ページ
次へ
「えっ。それって⋯⋯」 「結婚しよう。夏美」 「でも、何にも縛られたくないって⋯⋯」   夏美は戸惑いの表情を見せた。  それから、あからさまに顔を曇らせる。  「そばにいてほしいんだ。この先もずっと」 「無理してない? 今回のことで、健吾を責めたかったんじゃないよ」 「これは俺の本心だよ。これまで夏美の気持ちに向き合えなくて、本当にごめん」 「健吾⋯⋯」 「今日、夏美がいない部屋で考えてたんだ。目の前から夏美がいなくなったらどうしようって。すげぇ怖くて。今までの人生で感じたことないくらいの恐怖だった」 「どこにもいかないよ、わたしは」 「夏美を幸せにする自信はまだないけど、ずっとそばにいたいんだ。⋯⋯そんな理由じゃ、だめかな」   夏美の目から溢れ出す涙。  ぽろぽろと落ち続ける涙は綺麗だった。  「健吾のそばにいられるだけで幸せだよ」 「ったく、夏美は泣き虫だな」 「ずっと泣き虫だよ。それでもいいの?」 「そんな夏美がいいんだよ。⋯⋯おいで」   手を広げ、夏美の全てを抱きとめる。 
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加