密やかな週末

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 今日は二人とも休日だったはず。  なのに、夏美はどこかへ出かけるらしい。  日曜日はたいてい昼過ぎまでベッドの上にいて、どちらかの腹が減ったら二人でランチを作って食べる。それが俺たちの日常だ。  付き合い始めて5年。  何度か人並みに倦怠期を経験したけれど、こうして”二人だけの時間を大切にする共通意識”に変化はなかった。  周りの妻子持ちたちに「子供は大変だけどいいぞ〜」と我が子の待受画面を自慢げに見せられることにも慣れた。「大変だ」なんてグチを吐いてたって、緩んだ顔からは隠しきれない幸せが溢れ出している。  そんなニヤけた顔を見る度に思う。  俺と彼らの間には、地球と月くらいの距離があるのだろうと。  月が肉眼でも見えるように、結婚がどんな形なのかを漠然と知っていても、実物を知っていることにはならないのと同じ。 ――その幸せは、長く続くのだろうか?  今の俺には、まだその確信がない。  誰かのせいじゃない。  完全に自分の問題だ。それも分かってる。  結局、人を傷つけたくないし、自分自身も傷つきたくないからだろう。こんな俺が誰かを幸せにできるとは、到底思えない。  夏美がそばにいてくれるだけでいい。  今が満足なら、未来に多くは望まない。  俺の結婚なんて、民間人が気軽に月に行けるようになるくらい、まだ先の話。
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