夜更けの葛藤

4/5
前へ
/15ページ
次へ
  たいして興味もないゴシップのネット記事を、ベッドサイドの明かりの下で、意味もなく淡々とスライドし続けていた。  夏美のいない時間は、気が遠くなるほどに長く、己を見失ないそうなほど息苦しく感じる。  シーツを片方の手の甲で優しく撫でる。弱気になった俺を慰めてくれる夏美の温もりが、そこから感じられるような気がした。   ピーピー ピロロロロ。ピーピー ピロロロロ。⋯⋯。  カナリアの時計が、10回鳴く。  もう22時か。  だが、寝室の扉が開く気配はない。   夏美はいつも、自分の気持ちは後回し。 「大丈夫」「いいよ」「平気」――。  本心を奥にしまい込む癖がついている。  だから、夏美が苦笑いを作るような時は、本心を出しやすいように心掛けていたのに。  冷静に話を聴いてあげられなかった。  今頃になって、後悔が込み上げてくる。   ――そうか。夏美のことだから、二次会に誘われて断れなかっただけかもしれない。  変に勘ぐるような訊き方をしたから、返事に困っただけで。誤解を解く機会すら与えなかったのは、俺の方じゃないのか。  もし、後ろめたい関係だとしたら、わざわざ結婚を祝いに行くはずなんてない。 
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加