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たいして興味もないゴシップのネット記事を、ベッドサイドの明かりの下で、意味もなく淡々とスライドし続けていた。
夏美のいない時間は、気が遠くなるほどに長く、己を見失ないそうなほど息苦しく感じる。
シーツを片方の手の甲で優しく撫でる。弱気になった俺を慰めてくれる夏美の温もりが、そこから感じられるような気がした。
ピーピー ピロロロロ。ピーピー ピロロロロ。⋯⋯。
カナリアの時計が、10回鳴く。
もう22時か。
だが、寝室の扉が開く気配はない。
夏美はいつも、自分の気持ちは後回し。
「大丈夫」「いいよ」「平気」――。
本心を奥にしまい込む癖がついている。
だから、夏美が苦笑いを作るような時は、本心を出しやすいように心掛けていたのに。
冷静に話を聴いてあげられなかった。
今頃になって、後悔が込み上げてくる。
――そうか。夏美のことだから、二次会に誘われて断れなかっただけかもしれない。
変に勘ぐるような訊き方をしたから、返事に困っただけで。誤解を解く機会すら与えなかったのは、俺の方じゃないのか。
もし、後ろめたい関係だとしたら、わざわざ結婚を祝いに行くはずなんてない。
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