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起
ああ、なんて憂鬱なんだろう……。
今日、あのことに決断しなければならないなんて。
昨日からの生理痛でちょい辛い時なのに。
選りに選ってこのタイミングで来るなんて……。
「ふぅ……」いつもより重く感じる体を溜息混じりに起こす。
もうこんな時間か……。
漸くベッドから降りて朝食の準備に掛かる。
コーヒーにトースト、それに昨日帰りにコンビニで買ったサラダ。
在り来りないつもの朝食を摂りながら、リモコンを手にテレビを点けた。
朝の情報番組を見ながら、ちょっと焼きすぎたトーストをかじる……。
「あ、今日の占いか。ん?運命の決まる日?重いわ……」
大きめのマグカップに淹れた濃い目のコーヒーを口にしながら見ていると、爽やかな笑顔を満開にさせた女性キャスターは「今日のラッキーパーソンは傘を持った人です。六月十五日、今日も元気にいってらっしゃい」と締め括った。
「おい、今日は快晴だってのに……誰が傘を持つのさ……」
一人寂しくツッコミを入れると、心の中で私だけが曇天になった……ような気がした。
アパートを出て駅へ向かう道を、足だけは忙しなく動かして歩いている時も、頭の中はあのことを考えていた。
『今日の夕方六時か……どう答えたら?いや、そもそも気持ちは固まってないし』
気持ちだけはどんよりとしたまま、いつもの通勤電車に乗り込む。
混雑した車内で一本の吊り革にどうにか掴まると、目の前の席に座る六十代くらいのおじさんが目に入った。
おじさん――私の父と同年代と思われるその人は、このSNS全盛のご時世に新聞を折り畳んで読んでいる。
『満員電車で新聞広げるかな……』そう思っておじさんの新聞に何気なく視線を向けた。
見ようとした訳ではないが、こちらに向けた紙面の占いコーナーが目に飛び込んでくる。
『また占いか。あれ?また運命的な出会い……傘を持つ人?』同じ占い師かと思ったけどそうではないようだ。
『よほど傘を持つ人と縁があるらしい』
『いくら何でもそんな訳ないでしょ。馬鹿らしい』自分に言い聞かせながら、何処か心の中がモヤモヤする……。
会社の最寄駅に着くと、私はモヤモヤしたまま電車から吐き出された。
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