スカウト

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放課後、学校近くのファミレスで記者と待ち合わせる事になった。 そこはテスト前になると、みんな集まって勉強しているファミレス。人通りも多いし、防犯カメラだってある。 いざとなったら近くに学校も、交番もある。 何より、馴染みのある場所だったので、不安はかなり薄れた。 少しドキドキしながらファミレスへ向かう。 「佐和いい?少しでもヤバイと思ったら逃げるんだよ!」 「分かったって~。奈美はめっちゃ慎重だね。」 「だって、今SNSでの犯罪多いじゃ無い。」 「まぁね。とにかく大きい声は私に任せて!」 「それはよろしく。」 そんな事を打ち合わせしながらあっという間にいつものファミレスに到着する。 指定されたファミレスのボックス席に向かうと、既に記者の女性は座っていてコーヒーを片手にノートパソコンに何かを打ち込んでいる。 (よかった、女の人だ。) 大柄の男とかだったら力尽くでこられたら太刀打ち出来ないから『その時点で逃げよう。』と決めていたけど、これなら大丈夫そうだ。 その記者の女性は、私たちに気がつくと立ち上がって、ニコリと微笑み「こんにちは」と言った。 「クローバー少女の子よね?」 感じも良ければすごく美人。 頭も良さそう。 私たちは少し圧倒されながら「はい」と返事をした。 「よろしくね。私はこういう者です。」 私たちは席に着きながら名刺を受け取る。 ーー「地域情報紙 ウェル」 ーー記者 森川 恵 地域情報紙?ウェル? 聞いた事の無い雑誌だった。 「すみません、私たち雑誌、知らなくて。」 私が申し訳なさそうに言うと、森川さんは笑いながら 「知らなくてもしょうが無いわ。あなた達のお母さんより、もっと上の年齢層向けの地域情報誌だから。」 と言ってくれた。 そして「好きな物を選んでね。」とメニューを差し出して、優しく微笑みながら話をした。 「突然ごめんなさいね。 巻末のコラムの内容に行き詰まってて。 SNSでネタ探ししてたら、佐和さんの画像を見つけたの。 クローバー少女、会ってみたいと思って。 お名前伺ってもいいかしら?」 私は慌てながら 「も、申し遅れました。 村岡奈美です。 私の話なんかが参考になるのか分かりませんが、よろしくお願いします。」 と自己紹介をした。 「よろしくね。 そんなに緊張しなくて大丈夫! 佐和さん、紹介してくれてありがとう。」 佐和は「そんな〜」と少し照れている。 「経費で落ちるから遠慮しないで好きな物頼んでね。」 そんな森川さんの言葉を聞いて、佐和は「私、決めた!」とメニューを閉じた。 「奈美は?何にする?」 「私は、パンケーキと、りんごジュース」 「私、紅茶シフォンとオレンジジュース!後でシェアしようね。」 そんな私たちの会話を聞き、森川さんが席を立つ。 「丁度、お手洗いに行きたかったの。ついでに注文してくるから待っててね。」 「お願いします。」 女性の背中を見送りながら私たちは同時に安堵のため息をついた。 「怪しくなくて良かったね。」 「ホントだね。」 すっかり安心しきった私たちはいつも通りのおしゃべりをしながら女性の帰りを待っていた。
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