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傷つき貯金
朝、道端のガムを踏んだ。
ああ、登校中なのに──とても傷ついた。
ため息をつくと同時に耳元で、チャリンと音がした。
20××年。
日本政府は、画期的な政策を施行した。
いじめや迫害、ブラック企業などの様々な問題を抱える現代の日本。
そこで考え出されたのがこの「傷つき貯金」だ。
その名の通り、自分が傷つくと専用の口座に貯金される。
貯金される額は傷ついた程度によって違い、
貯金されると、専用のインカムから額が知らされるという仕組みになっている。
そんなこんなで、この政策が施行されてから、
「皆で被害者の気持ちを知ろう。被害者と呼ばれる人々をなくそう」
そんなスローガンが、町中に掲げられているのである。
靴の裏に、しっかりとへばりついたガムを、道路にこすりつけながら歩く。
先ほどの音的に、多分貯金額は500円ほどだ。
それでも、お金が支払われたのだと思うと少し心が軽くなって、まあ、いっか……と思える。
ガムをへばりつけたままの靴を靴箱に移すと、またチャリンと音がした。
──多分100円くらいだろう。
そんなことを思いながら私は、上履きに履き替えて、教室へ向かい自分の席についた。
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