ヘビーストーカー

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「ねえ、覚えてる?」  インターフォンのモニターの中、女はニタリと笑った。俺は震えた。 「え、えーと」  なるべく平静を装ったつもりだが言葉を詰まらせてしまった。  大丈夫。  インターフォンのモニターに映る女は未だニタリと笑ったままだ。  俺は事前の打ち合わせの通り、女が来ましたと警察署に電話した。 「あの時、言ってくれたよね。私のことを一生愛するって」  警察官が来てくれるまで一〇分ほど。俺はどうやって話を伸ばそうかと悩んだ。 「あの時って?」 「あの時よ。初めて出会った時よ」  初めて会った時、まったく覚えていない。それどころか俺はこの女とまともに話をしたことがない。 「ねえ、覚えているでしょ?」  何とか会話を弾ませて時間を稼がないといけないが、言葉が出ない。  モニターの中の女の顔がスンとなった。
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