0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そろそろ日が暮れそうですね」
「うん、そろそろ休もうか」
ミラは海から上がると、海岸沿いに咲く花を見つけた。
「博士、この花はなんというのですか」
「ああ〜、それはね」
ミラはピンク色の花に顔を近づける。
「ハマナスって言うんだ。バラ科の植物で、木の実が酸っぱいことから浜梨、ハマナスと訛ったらしい。花言葉は『悲しくそして美しく』。ローズヒップの原料やお茶など様々な用途に使われるんだ」
「バラの仲間ですか」
「うん。まあ、とは言ってもバラとは別物の植物なんだけど」
ミラはしばらく固まった後に言った。
「同じバラなら問題ないでしょう」
そして、ミラはおもむろにハマナスの花を摘み取った。
「…ミラ?」
ミラは振り返って、摘み取った花を差し出した。
「博士、ここに3つのバラがあります」
バラは本数で花言葉が変わる。
「花言葉…?知ってるの?」
「本屋に寄ったとき見かけました」
ミラはゆっくりとこちらに近付いてきた。
「これを博士に」
そう言って、ミラは僕の手にハマナスの花を乗せた。
「ミ、ミラ……お前…」
「難しい事なのでよくわかりませんが、きっとこういう事なのでしょう」
ミラは、いつものようにニコッと機械的に笑ってみせた。
「愛しています、博士」
その機械的な笑みは、僕の目には満開の花のように美しく咲き乱れて見えた。
最初のコメントを投稿しよう!