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「海。初めて見ました」
ミラは波打ち際に立って海を眺めた。
「あまり近づくと錆びない?」
「私の素材はポリマー製なので大丈夫です」
そう言うと、ミラは海に足をつけた。
「大きいです」
「この海の先にはもっと大きな大陸があるんだ」
「ユーラシア大陸ですね」
「そう。まだ僕も行ったことがないんだ」
ミラはこちらに振り返った。
「行きましょう、博士」
「行けるのかな。僕、船も飛行機も使えないよ」
「私が操縦します」
確かに。ミラがいれば何でもできそうだ。
「…ああ、そうだな。よろしく頼むよ、ミラ」
「また長い旅になりそうですね」
ミラはしばらくの間海の向こうを見つめていた。
「久々に釣りでもしたくなってきたな」
「釣りですか。私はした事ありません」
「僕が教えるよ。後で釣具屋さんに行こう」
「よろしくお願いしますね」
僕はしばらく考えた後に、ミラに話した。
「ミラ。僕とミラは、これから色々な所に行くだろう」
「はい、楽しみです」
ミラは笑顔でそう言った。
「どんな事が待ち受けているのか、それは僕にもミラにもわからない」
「はい」
ミラの声のトーンが少し落ちる。
「僕はミラとは違って、時間に限りがあったりする」
ミラは返事をしない。
「まだまだ先の事になるけど、いずれ僕とミラは共にいられなくなる」
「すみません、よくわかりません」
ミラはいつもと同じ声で言った。
「もしそうなったら。ミラは自分で何をすべきか見つけるんだ」
「私にはできかねます」
「大丈夫、大丈夫だ。僕がこれから教えていくから」
「博士」
ミラはしばらく考えるように固まった。
「博士がいなくなったら、私は誰にお仕えすればよいのでしょうか」
「…ププッ」
少し笑ってしまった。
「何がおかしいのですか」
「大丈夫だよミラ。ミラが心配するほどすぐには死なないさ」
僕は笑いながら言った。
「それまでは、一緒にいるから」
「よかったです。そうなってしまっては困りますから」
「それもそうだ」
僕はひとしきり笑った後にミラに訪ねた。
「ミラ、今日はここで一晩泊まっていかないか?」
「いいですね。ちょうど私もそう思っていた所です」
「よーし」
僕は走って海の浅瀬に足を入れた。
「おー、つめて」
「濡れてしまっては体温が下がります」
「いいんだよ。せっかくだから、遊んでいこう」
僕はミラの手を取り、浜辺を歩いた。
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