アングレカム

2/3
前へ
/9ページ
次へ
「海。初めて見ました」 ミラは波打ち際に立って海を眺めた。 「あまり近づくと錆びない?」 「私の素材はポリマー製なので大丈夫です」 そう言うと、ミラは海に足をつけた。 「大きいです」 「この海の先にはもっと大きな大陸があるんだ」 「ユーラシア大陸ですね」 「そう。まだ僕も行ったことがないんだ」 ミラはこちらに振り返った。 「行きましょう、博士」 「行けるのかな。僕、船も飛行機も使えないよ」 「私が操縦します」 確かに。ミラがいれば何でもできそうだ。 「…ああ、そうだな。よろしく頼むよ、ミラ」 「また長い旅になりそうですね」 ミラはしばらくの間海の向こうを見つめていた。 「久々に釣りでもしたくなってきたな」 「釣りですか。私はした事ありません」 「僕が教えるよ。後で釣具屋さんに行こう」 「よろしくお願いしますね」 僕はしばらく考えた後に、ミラに話した。 「ミラ。僕とミラは、これから色々な所に行くだろう」 「はい、楽しみです」 ミラは笑顔でそう言った。 「どんな事が待ち受けているのか、それは僕にもミラにもわからない」 「はい」 ミラの声のトーンが少し落ちる。 「僕はミラとは違って、時間に限りがあったりする」 ミラは返事をしない。 「まだまだ先の事になるけど、いずれ僕とミラは共にいられなくなる」 「すみません、よくわかりません」 ミラはいつもと同じ声で言った。 「もしそうなったら。ミラは自分で何をすべきか見つけるんだ」 「私にはできかねます」 「大丈夫、大丈夫だ。僕がこれから教えていくから」 「博士」 ミラはしばらく考えるように固まった。 「博士がいなくなったら、私は誰にお仕えすればよいのでしょうか」 「…ププッ」 少し笑ってしまった。 「何がおかしいのですか」 「大丈夫だよミラ。ミラが心配するほどすぐには死なないさ」 僕は笑いながら言った。 「それまでは、一緒にいるから」 「よかったです。そうなってしまっては困りますから」 「それもそうだ」 僕はひとしきり笑った後にミラに訪ねた。 「ミラ、今日はここで一晩泊まっていかないか?」 「いいですね。ちょうど私もそう思っていた所です」 「よーし」 僕は走って海の浅瀬に足を入れた。 「おー、つめて」 「濡れてしまっては体温が下がります」 「いいんだよ。せっかくだから、遊んでいこう」 僕はミラの手を取り、浜辺を歩いた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加