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「この剣すごいね。一発であのネズミみたいなの倒しちゃったよ! 貸してくれてありがと。ってことで、はい返す」
優衣は剣を少年に差し出した。
「あ、えっと……良かったらその剣、キミにあげようか?」
「えっ?」
「ほら、キミって戦士志望なんだよね? 見た感じ僕とそんなに歳は変わらなそうなのに、剣術凄かったし。剣の扱いが得意じゃない僕なんかよりキミが持ってるべきじゃないかなその剣は。色合いもキミのが似合ってるし、ぶっちゃけかわい──」
「やだ! 返す!」
少年の言葉を遮るように、優衣は剣をさらにグイッと前に差し出した。
「えっ!? いや、大丈夫だよ売りつけようとしてるわけじゃないんだから……」
「それが気持ち悪いの! そもそもあのタイミングで突然現れたのも不自然だし、タダでくれるとか怪しすぎ! まだ、売りつけようとして来る方が納得できるって感じだよ」
優衣は毅然と言い放った。
例えば、もしもこれが母の香織だとしたら「はい、どうも~」と言って深く考えずに受け取っていたに違いない。
慎重さに関しては父の直樹譲りと言えるだろう。
もっとも、少年にとっては香織パターンの方が良かったに違いない。
優衣の口から飛び出した「気持ち悪い」の一言がメンタル的にかなり効いたようで、目を泳がせてしまっていたのだ。
ただ、すぐに立ち直ったのか、元のキリッとした目に戻る。
「よし、それならじゃあ……友達になってよ! 恥ずかしいけど僕、同い年ぐらいの友達がほとんど居ないんだよね。だから、キミと友達になりたいなって。強いし可愛いし……。で、友達になってくれたら、お礼にその剣をあげる、ってことでどう? それなら意味なくあげるわけじゃないし──」
「は? なんで友達になるだけでお礼くれるの? そんなの友達じゃないし、気持ち悪い!」
またしても、優衣の口から鋭利な言葉の刃が飛び出した。
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