第21話 ピンクゴールドの剣

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「……プッ……ぷはっ!」  少年は、自分の三文芝居に対して忠実に付き合ってくれた優衣の臭い芝居に対し、たまらず吹きだした。 「ふふっ、なにこれ、ははっ」  優衣も一緒に笑い出す。  実はこの時、近くの草むらに隠れていた魔物が飛び出すタイミングを伺っていたのだが、なぜか突然笑い始める少女と少年の姿を見て、コイツらは何かヤバそうだと感じてそっと撤退したことに、二人は全く気付いていなかった。 「なんか言い過ぎちゃってごめんね! もし良かったら、友達になってくれる?」  今度は優衣の方からオファーを出す。 「もちろん! 僕の名前はロフニス。よろしく!」 「わたしはユイ。こちらこそよろしく! あっ、そうそう。たった今、こんな可愛らしい剣拾ったんだけど、こんな森の中にポツンと落ちてたなんて思えなくない?」 「おお、ホントだすごい! なんでこんなところに。誰かが間違って落としたのかな? だとしたら、よっぽどのマヌケ……って、いつまで続けるこれ?」 「あっ、そろそろ飽きてきたから終わりにしよっか」 「うん、僕もそう思ってたとこ」  そう言って、二人はフフッと笑った。  実はこの時、別の草むらに隠れていた魔物が……以下省略。 「ねえ、ロフニスはこんな所でなにしてたの? ……って、わたしが言うのもあれだけど」 「うん、たしかに」  ロフニスは優しく笑いながら続けた。 「実は、この辺にあるはずの"小屋"を探してるんだよね」 「ふーん。その小屋に何かあるの? お宝的な?」 「いや、そういうわけじゃ……って、まあそうかもね。そこに何があるのかすら知らないんだけど」 「そっか……って、全然意味分かんない! 何があるか分からないのになんでその小屋がこの辺にあるはずだって知ってるの?」  ユイはピンクゴールドの剣を地面の土に突き立てると、柄の部分に体重を乗せる。  意味が分からないからこそ興味を引かれ、リラックスできる体勢でじっくり聞くために。   「し──家の片付けを手伝ってたらさ、宝物庫……っていうか倉庫的なところでこれを見つけたんだよね」  少年は仕立ての良さそうな革製の白いパンツのポケットから、古びた鍵を取り出した。 「おお、なんかいかにも宝の鍵って感じ!」 「うん、実は僕もそう思ってさ、親に聞いてみたんだよね。そしたら、この鍵はこの森のどこかにある"小屋"の鍵だ、って言うから」 「なるほど。だから、“何があるのかわからない宝探し”をしてるんだ?」 「そうそう! あっ、ユイさ、もし良かったら一緒に来る? っていうか、対魔物のボディーガードになって欲しいんだけど。すげえ強かったし、さっき」 「えっ、そ、そう?」  分かりやすく照れる優衣。   「うん。情け無いけどさ、はっきり言って僕より強いと思う。まっ、ユイは戦士で、僕は修行中の身だから仕方無いと言えば仕方無いんだろうけど……」 「たしかに……って、いつからわたし戦士になったの? 剣を持ったのだって生まれて初めてなのに!!」 「えっ、マジ!?」 「うん、マジマジ。あっ、ってことはめっちゃ才能あるのかな? 剣の天才的な……」 「そうかも知れないよ、ホントに。その剣でダメージ10以上出てたし」  ユイは冗談のつもりで言ったのだが、ロフニスが思いのほか本気のトーンで返してきたもんだから、逆にちょっと恥ずかしい気持ちになっていた。  ただ、戦士やボディーガードという響きに対しては満更でも無い様子。 「よし、じゃあ小屋探し、一緒に行こっかな。どうせ暇だし!」 「おう! それじゃ早速出発しよう!」 「おー! で、どっち方向に行けば良いの?」  ユイは、360度ほとんど変わらない森の景色を見渡しながら訊いた。 「うーん……分かんない。逆に訊くけど、ユイはどっちにあると思う?」 「えっ、そんなの分かるわけ……あっ、なんかこっちにありそうな予感する」  ユイは自分の家がある方向とは逆の方を指差した。  ここまで来た道のりで小屋らしきものは全く見ていなかったので、だったらさらに先にあるんじゃないか、という極めて適当な考えから導き出した予感であった。 「うーん、そっちには無いと思うよ」 「えっ、なんで?」 「だって、僕はそっちの方から来たから」
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