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「よし! 今度、ウチくれば? ママに頼んで焼きそば作ってもらうから、実物見れば一発だよ!」
「……えっ? ユイの家に招いてくれるの? そ、それは光栄というか嬉しいというか……。ぜひ、その際は正装して伺いたいんで、正式な日取りについて決まり次第──」
「やだ、カタいよちょっと! パパには悪いけど、めっちゃフツーの家だから! そんな風に言われると誘いづらくなっちゃうよー」
「えっ!? あっ、それはダメそれは。正装とかウソだから。ジョーダンジョーダン。はっはっは」
「そっか。って、とにかく今は小屋探しだよ!」
「あっ、そうだそうだ、忘れてた。まあ、今となっては小屋なんかよりユイの家の方が気になって……」
そんなロフニスの言葉とは相容れず、優衣の頭は小屋探しで一杯だった。
「ねえ、こっちがロフニスが住んでるとこで」
優衣は東の方向を指差し、体を回転させながらその指をそのままつーっと逆方向に向けて、
「こっちがわたしの家の方。ってことは……その小屋がありそうなのはこっちとこっち!」
と、優衣は左手で北、ピンクゴールドの剣を持った右手で南を差しながらロフニスの顔を見た。
「う、うん、まあそうだけど……こっちはやめておいた方が」
ロフニスは、北を指す優衣の左腕に自分の手をポンと乗せて、グイッと少し力を入れて下げさせた。
「なんで?」
シンプルな疑問をぶつける優衣。
「うん。そっち……北の方はヤバいんだよ。もうとにかくヤバいの!」
歯切れ悪く答えるロフニス。
普通、そういう風に言われたら余計気になって詮索したくなるところだが、優衣はあっさり、
「うん、じゃあこっち探してみよ!」
と、南に向かって森の中を歩き始めた。
何かの理由で敢えて詳細を伝えないようにしていることを、ロフニスの表情から感じ取ったのか、それとも単に深く考えず消去法で行き先を導き出しただけか。
いずれにしても、その対応により優衣の危機が回避されたことは間違い無かった。
なぜなら、直樹が出会った商人のポブロトもまた、北方面は絶対に行っちゃダメと言っていたのだから……。
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