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「あった! これがその……小屋??」
優衣はソレを目の前にしてやんわりと小首を傾げた。
「うーん……小屋には見えないな」
ロフニスはソレを見上げながら呟いた。
「だよねぇ……」
湧き出る"しっくりこない感"に包まれた二人の目の前には、円筒形の建造物がそびえ立っていた。
綺麗な白い色の石造りの壁には、等間隔で円い窓がはめ込まれている。
その窓の配分からして、恐らく3階か4階建て。
その時点で小屋という言葉のイメージとはズレがあり、円筒形の形状といい、無機質な雰囲気といい、その建造物を現す最適な言葉は……
「小屋というより塔って感じ?」
優衣が呟いた。
少し前に観たばかりの、ファンタジーなアニメ映画に出てきた"何とかの塔"にとても似ているように思えたからだ。
まあ、その塔は目の前のものより何倍も大きいものだったが。
「あっ、確かにそれのがしっくりくるかも」
ロフニスは、うんうんと頷いた。
「ねえ、あれ扉かな?」
「そうかも」
二人は塔の1階部分にはめ込まれた木の扉のようなものへと近づいてみた。
間近で見ると、木の板にはノブのようなものが付いており、形状的にも恐らく扉で間違いなさそうだった。
そして、木製扉には錠前付きの鉄の鎖が巻き付いていた。
「……これだ!」
ロフニスは、ポケットから例の鍵を取り出してみせた。
「そっか。その鍵で開けることができたら……ロフニス、早くやってやって!」
「おう! 言われるまでもないぜ!」
ロフニスは錠前に左手を添えて、右手に持った鍵を鍵穴へと差し込んだ。
古びた鍵はスーッと穴に吸い込まれていった。
そして、ロフニスが鍵を回転させると、カチッと気持ちの良い解錠音が鳴り響く。
「よっしゃ!」
「ビンゴ!!」
同時に歓声を上げた。
「入ってみようよ!」
「おう!」
ロフニスは鎖と南京錠を扉の横にどかしてから、そっとドアノブを握った。
「じゃあ、開けるよ……?」
「うん……」
小さな小屋ならともかく、見上げるほどの高さがある塔。
しかも、こんな森の中にポツンとそびえ立っているという謎。
今さらながら、二人の間に何とも言えない恐ろしげな空気が流る。
ロフニスの手がドアノブを押すと、扉の隙間から埃の匂い、そして得体の知れない何かの気配が漂い出てきた。
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