第23話 鉄の扉みたいなやつ

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第23話 鉄の扉みたいなやつ

「失礼しまーす……」  ロフニスは丁寧に挨拶しながら塔の扉を開けた。  中は薄暗く、二つの窓から僅かな光が差し込むのみ。   「ユイ、気を付けてね」 「うん」  ゆっくりとした足取りで中に入るロフニス。  そのすぐ後ろから優衣が続く。  そこは、外から見た塔の形そのままの円い広間になっていて、テーブルや椅子などの家具類は一切置かれていない。  ただ、壁には所々絵が掛けてあり、壁沿いの床に壺などの調度品がポツポツと置いてあった。 「ここって何なの?」  優衣の素朴な疑問だったが、ロフニスも前情報を持ってやってきたわけではない上、部屋にはここがどのような場所なのかを指し示すようなものが何も見当たらなかったため、   「うーん……ごめん全然わかんない! 」  と返すだけ。 「そっか。……って、あれ、もしかして階段かな?」  前方を指差し優衣。  壁沿いに作られたらせん階段。  少しずつ暗さに目が慣れてきて、インスタントカメラの写真が徐々にはっきりすようにじわじわと、部屋の様子が明確になっていく。   「うん。階段だ! とりあえず行ってみよう!」  ロフニスはその階段に向かってゆっくり歩き出した。  が、数歩進んだ所で「ん?」と声を漏らす。 「どうしたの?」 「うん……これなんだけど……」  優衣が駆け寄り声を掛けると、ロフニスは床に目を落としていた。  円い部屋の中央あたり。  その床に何かの模様。  マンホールサイズの丸い線、その中に動物か魔物か何かを表したような絵。 「この絵? 知ってるの?」 「うん。知ってるというか、僕の家の紋章なんだけど」  ロフニスは小首を傾げながら答えた。  なんでこんな所に……といった様子。   「紋章? って、家紋みたいな感じ?」 「うん。そんな感じ……かな。でも、なんでまたそれがここに……」 「えっ、だって、ここの鍵をロフニスんちの倉庫で見つけたんでしょ? だったら、全然不思議じゃなくない?」 「ああ、確かにそうだよね! ごめんごめん、気にさせちゃって。さあ、それより階段だ」 「うん!」  そう言いつつ、ロフニスはまだ紋章について引っかかってる様子だったが、それをここで立ち止まってうだうだと悩み続けても何にも解決しないとばかりに、階段のある壁へと進み始めた。  さっき見た時はもしかしてそうかも……ぐらいの感覚だったが、近づくにつれはっきりとそれが階段だと分かった。  それじゃこの階は2階に上がる階段があるだけの部屋じゃん……と、優衣が心の中で呟いたその時。
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