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「うわっ! で、出た!」
ロフニスが急に立ち止まった。
「なに!?」
後から付いてきていた優衣は思わずロフニスの背中にぶつかりそうになった。
「ま、魔物だ!!」
「えっ?」
まだ目の前にロフニスの背中しか見えなかった優衣は、その背中に手を置いて顔だけ横にずらしてみた。
「……おっ、ホントだ! えっ、でも、この部屋誰も居なかったじゃん。どこから出てきたの??」
「いや、僕も分からない。ずっと床の紋章見てて、歩きながら顔を上げたらもうそこに居て……」
「そっか。って、どうする? 倒すっきゃない感じ?」
優衣はすばやくロフニスの横に並びながら、ピンクゴールドの剣を両手で構えた。
「ベーカベカ!!」
優衣の動きに呼応するように奇妙な鳴き声を上げた魔物は、今まで遭遇したスライムやオオネズミのやつとは全く違う姿形をしていた。
体は縦長の長方形で、その中央部分に目や口などのパーツが集約されており、両側に短い腕、長方形の底辺部分に短い足がちょこんと付いている。
この部屋の暗さにもかかわらず、体の表面には若干の光沢が見えた。
皮膚……というより、どちらかといったら金属に近い雰囲気。
「これってもしかして……めっちゃ強い?」
優衣は、率直な思いを伝えた。
「うん……たしかコイツは、とにかくめっちゃくちゃ硬い魔物だったような気がする。図鑑でしか見たことないけど」
ロフニスは苦み走った顔で答えた。
見た目といい、硬いってこといい、まるで鉄の扉の化け物みたい……と、優衣は思った。
どこかの部屋の扉が何かの拍子に外れて、手足が生えてここまで歩いてきたみたいな風貌だ。
「なんかめっちゃ強そうだけど、どーする? わたしたちで倒せると思う?」
「うーん、どうだろ──」
ロフニスが言いかけた途端。
「ベーカベカァァァ!」
みすみす作戦会議なんか進ませないとばかりに、鉄扉の魔物がふたり目がけて突進してきた。
短い手足をバタバタと動かしながら走ってくる様子はある意味可愛らしくもあったが、そんな風に感じ取れるほど二人に余裕は無い。
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