第26話 真夜中のドンドンドンッ

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 ドンドンドンッ  ドンドンドンドンッ  どうやらそれが聞こえてくるのは床の下、つまり1階。  となると、誰かが玄関のドアでも叩いているのだろうか?  直樹はヘッドボードに置いてある携帯を手に取って時間を確認した。  夜中の2時。  知り合いだろうが知り合いじゃなかろうが、いずれにせよこの時間の訪問はただ事では無い。  こんなにハッキリと音が鳴り続けているにもかかわらず、スヤスヤと眠り続けている妻を起こそうかどうか迷ったが、気持ちよさそうな寝顔を見るととてもその邪魔をする気にはなれなかった。  直樹はそっとベッドから出ると、壁に立てかけておいたままだった魔法の杖を手に取り、寝室を後にする。  2階の廊下に出て子ども部屋の方に目をやったが、ドアはきっちり閉まったままだ。    ドンドンドンッ  相変わらず、音は鳴り続けている。  直樹は魔法の杖を両手でギュッと握りしめながら、ゆっくりと階段を降りた。  1階にたどり着いたところで、耳を澄ましてジッと待つ。  ドンドンドンッ  ドンドンドンドンドンッ  音がしたのは向かって右側。  つまり、玄関ではなくリビングのほう。  直樹の背筋に悪寒が走った。  夜中とは言え、玄関を叩く音であれば何かと理由を見つけ出すことができる。  しかし、それがリビングとなると話は変わってくる。  直樹の頭の中にはイヤな予感だけが残されてしまった。  それでも、一家の主として上で寝ている3人の安眠を守るべく、直樹はゆっくりと廊下を進んでリビングへと向かった。  ドンドンドンッ  音がする度に直樹はその身をビクッと強ばらせた。  どうやらその音は家の中では無く外。  いや、中と外を隔てる境界線、つまりリビングの窓の辺りから聞こえてきているようだった。  リビングには誰も居ない。  と言う事は、音を出している張本人はカーテンが閉まった窓の向こう側に居る……。  直樹は、魔法の杖に〈炎の魔練リング〉がちゃんとはめてあることを確認した。  ロフミリア側から音がしているとなると、窓を叩いているのはスライムかそれとも別の魔物か……。    ドンドンドンッ  ドンドンドンッ  音の勢いに気圧されないように、直樹はゆっくりとリビングを横切って窓際までやってきた。  そして、魔法の杖を片手で持ち、もう一方の手でカーテンの端を掴む。 「ふぅ……よし!」  息を小さく吐き出すと、意を決したようにザッとカーテンをめくった。
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