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「……分かった分かった! 俺だって死にたくないしな。その代わり、二人とも無茶だけはするなよ?」
「うん! やったー!」
「いえーい! 冒険冒険!!」
「にゃーん!」
「ったく……ふっ」
やれやれだぜ的な顔をした直樹だったが、内心では心躍っていた。
なぜなら、最近あまり一緒に過ごせていなかった子ども達と一緒にいられること、異世界を冒険できることがシンプルに嬉しかったのだ。
何はともあれ、こうして北の大地遠征パーティーが結成された。
メンバーは以下の通り。
涼坂直樹レベル1(武器:魔法の杖)
歩斗レベル2(武器:木の弓矢)
優衣レベル6(武器:ピンクゴールドの剣)
ささみレベル2(武器:素手)
なお、まだ異世界で草むしりしかしていない香織は留守番。
「じゃあ、私は急いでミリゼアに戻って調査団の時間を……って、そうだ。ねえ、アユト」
歩斗に向かって手招きするユセリ。
「ん? なに?」
「ほら、それの使い方教え忘れてたから」
ユセリは歩斗が首に付けっぱなしにしていた魔物召喚スキルチョーカーを指差した。
「あっ、そうそう! せっかくスララスと仲良くなったのに呼び方聞いてなかったよね!」
「うん。簡単だけどね。手でチョーカーに触れながら『出でよスララスやーい!』って叫ぶだけだし」
「オッケー! 出でよスララスやい! ね? あれ……スララスやい? それともスララスやーい?」
「どっちでもいいよそんなの! 呼ぶ感じの言い方なら何でも大丈夫だから。ねえ、あとさ、弓矢についてだけど」
「うん、なになに? ボクったら弓矢の才能ありすぎるから、あんまり魔物をいじめすぎるなって? わかったわかった。ほどほどに──」
「違うよもう! まっ、上手いのは認めるけど!」
「そ、そうかなでへへへ」
歩斗は自分から言いだしたくせに、顔の全パーツが溶けて落ちてしまうんじゃないかというほどの照れっぷりを見せた。
そんな息子の様子を見ていた直樹と香織は、感慨深げに目を細める。
社交的な優衣と比べて明らかに人見知りするタイプだった歩斗が、知り合ったばかりの女の子とこんなに楽しそうなやり取りをしていることに対し、驚き半分喜び半分といった親心。
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