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「ったく、俺たちパーティーなんだから一人で飛び出しちゃだめだろ」
「てへっ、ごめんさーい」
「ははっ、お兄ちゃん怒られてやんの~」
「うっせぇ! って、ねえパパ、なんとかオーブがあるのはどっち??」
「えっと……うちのリビングは確か北の方を向いてるんだから、このまま行けば良いんじゃ……」
涼坂家一行の現在地は、リビングから飛び出して森を少し行った辺り。
父であり、このパーティーのリーダーたる直樹がどんぶり勘定で適当に進もうとしたその時。
ささみが思いきりジャンプして直樹の体にしがみつく。
「うわっ、どうしたささみ? 急にかまって欲しくなったのか? ったく、可愛いやつめ……」
「違うっぽいよパパ。ささみ、その袋の中から何か出してくれ~、って言ってるみたいじゃない?」
確かに、ささみは左手でアイテム袋にしがみつき、右手で袋の表面をカリカリしている。
「何かってなんだ? エサは入って無いぞ……って、そうか! ごめんごめん、ささみ」
直樹は、片手で優しくささみのお腹を持って地面に降ろしてあげると、アイテム袋の中からロフニスに書いて貰った地図を取りだした。
歩斗と優衣、そしてささみにも見えるようにと直樹はその場にしゃがみ込んで、ヘッドライトの明かりを地図に向けた。
「えっと、この四角いのがうちのリビングかな。で、このモジャモジャしてるのが……」
「この森!」
優衣が早押しクイズに答えるように叫んだ。
直樹とささみは同時にコクリと頷く。
「うん。そうだろうな。で、森のずっと上のほうにあるこれは……」
「山だよ! デカそう!!」
次に早押しボタンを押したのは歩斗だった。
再び、直樹とささみは同時にコクリと頷く。
地図の一番上に黒く塗られた縦長の三角形、つまりこの森からずっと北に行った先に歩斗が言うとおり大きな山の絵が描かれている。
森と山の間のスペースはザザザとボールペンで薄く塗りつぶされており、そのスペースに向かって矢印が描かれていて『地面が紫色になったら、そこからが北の大地』と、ロフニスの文字が添えられていた。
紫色の地面を表している部分の中央辺りを横切る波線は恐らく川。
その川に向かって引かれた矢印には『橋は絶対に渡ってはだめ。そこから先は本当に危険。隠れみのオーブがあるのはその橋の手前周辺にある地下ダンジョンの中』といった説明書き。
「しかしこれ、ササッと書いていたように見えたけど凄くわかりやすい地図だな。大したもんだ」
直樹が感心していると、優衣がロフニスに代わって「へへへっ」とドヤ顔。
「とにかく、ここから北の方に向かって行けば紫色の地面ってやつにたどり着くだろうから、とりあえず進んでみよう」
と言いつつ、リビングを出て何となく真っ直ぐ歩いてここまで来たからそのまま突き進めば良かったのだが、一旦立ち止まってしまったことで、直樹は進行方向を微妙に見失っていた。
「えっと……こっちだったっけ」
勘で進もうとする直樹。
それを見かねたささみが、
「にゃーん!」
と鳴きながら、自信満々に尻尾を立てて歩き出した。
それは、直樹が行こうとした方向とは90度違う方角。
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