第30話 魔法→突進→回復→魔法

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 ズッチャ、ズッチャ。  シャン、シャン、シャン♪  ズッチャチャ、ズチャチャ。  ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪  どこからとも無く流れてきた賑やかな音。  そう、レベルアップ隊である。 「ただ今の回復により、アユトさんのレベルが2になりました! おめでとうございます!!」 「うぉぉぉ! レベル2きたぁぁぁぁ!!」  歩斗は全身で喜びを表した。 「にゃーん!」  近くの木の下で見守っていたささみも賛辞を送る。  それを見たレベルアップ隊のコビトたちも満足げに笑っていたのだが……。 「やったねお兄ちゃん!」  と、祝福の声をかける優衣の姿に気付いたレベルアップ隊のリーダーは、ブルッと身を震わせ、顔を引きつらせたままメンバーを引き連れてそそくさと帰っていった。 「もう! またわたしのこと見て逃げちゃったんだけど!」 「ん? レベルアップ隊となんかあったのか、優衣?」 「知らないよ! なんかわかんないけど怖がってるの! もう、今度来たらこの剣で……」  いや、それが答えじゃ無いのか……と、直樹は心の中でツッコミを入れる。  まあそれはそれとして、とにかく歩斗がレベルアップできたことで直樹もホッと胸をなで下ろしていた。  が、それが大きな油断となった。   「マグゥ~ウ!!」  甲高い鳴き声に気付き、直樹がその声の方向に視線を移したときには、クマの魔物はもうすぐ目の前。   「うわっ!」  直樹は咄嗟に体を真横に投げ出すことで、何とかギリギリ魔物の突進攻撃を避けることができた。  地面に倒れ込んでしまった直樹のダメージは今まで通りの5。 「よし、これなら歩斗に回復してくれれば……って、ん!?」  直樹の期待も虚しく、歩斗はレベルアップしたことに浮かれていて父のピンチに全く気付いておらず、弓を構えようともしていない。 「おい! 早く回復……」  直樹が叫ぼうとした途端、クマの魔物はすでに走り出していた。  さっき倒れ込んだ時に足をくじいてしまったのか、立ち上がって逃げようとしても体が言うことを聞かない。  残りHPは推定1。  体当たり攻撃が少しでも体をかすめた瞬間ゲームオーバー。  こっちの世界で死んだら一体どうなるのか……生き返らせてくれる呪文とかアイテムはあるんだろうか……なんてことを考える直樹のすぐ目の前にクマの魔物が突進してきたその時。
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