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普通に考えれば、家のリビングから窓を開けて庭に出るだけであり、いくら夜とは言えまず危険に遭うとは思えないのだが、直樹にとってさっき見たスライムの存在、そして窓の外に見える不気味な闇が、安全とはほど遠いように思えて仕方が無かった。
だから、窓の鍵を外そうとする歩斗の手を抑えようと……したその時。
「にゃーん!」
ささみが鳴き声を上げながら直樹の足下に近づくと、部屋着のスエット越しにふくらはぎのあたりを爪でカリカリし始めた。
「ちょ、ちょい、ささみ何してんの!?」
直樹は焦ると同時に、ささみからちょっかい出されている喜びに浸っていた。
歩斗はその隙を見逃さず、ササッと鍵を外して窓を開けた。
ヒュゥゥゥゥ。
生ぬるい風がリビングの中に吹き込む。
そして、最初に外へと飛び出したのは歩斗……でも優衣……でもなく、ささみだった。
「お、おい待て待て!」
直樹の声には、ペットの猫が外に飛び出してしまったという焦りに加え、あっという間にちょっかいタイムが終わった悲しみもこもっている。
「ユイ、行くぞ!」
「うん!」
子ども達が真っ先にささみの後を追って庭に出ると、地面に並べられていたサンダルを履いて闇の中へと消えて行く。
どんどん遠のいていく足音は、闇の先にはブロック塀も隣家も無いことを示していた。
「お前ら待てって! もう、俺も行く!」
直樹は焦りながらもしっかり自分のサンダルを選んで履き、庭へと飛び出した。
まず、襲いかかって来た大きな違和感。
それは気温。
エアコンが効いた部屋の中よりも暑く、一瞬にして直樹の顔からは汗が溢れていた。
季節はもう冬に差し掛かっていて、コート無しでは居られないというのに……。
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