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第31話 初めての召喚
「そうか! アイテム袋!」
直樹は右手に持っていた魔法の杖を脇に挟み、肩にかけた布袋の口を開けながらささみの頭を撫でた。
絶体絶命の危機をひっくり返すような起死回生のアイテムを求めて、袋の中を引っかき回す。
クマ魔物は直樹のその様子が気になったのかピタッと動きを止め、袋の中から一体何が出てくるのかと興味津々の眼差しを送っている。
「にゃーん、にゃーん!」
早くしないとクマ魔物の気が変わっちゃうよー、と言いたげにささみが直樹の足を爪でカリカリした。
「イテテテ! わかったわかった! うーん、なんか色々入ってるけど、何がどんな効果のアイテムなのか全然わからんぞ……ん? これは何か良さそうじゃないか」
そう言って、直樹は袋の中から小さな茶色い巾着袋を取りだした。
口を閉じている革紐をほどくと、中には青色の丸い玉が5、6個入っている。
「これは……かんしゃく玉??」
その玉を見た直樹は、少年時代に何度か遊んだことのあるオモチャを思い出していた。
地面に叩きつけたり足で踏んだりすると、弾けて「パンッ!」と大きな音が鳴り、同時に火薬の匂いを漂わせる、正式な利用方法が謎なオモチャ。
「久しぶりに見たなぁ……って、それと決まったわけじゃないけど──」
「にゃーん!!」
直樹が悠長にしていると、足下のささみが突然大声で鳴いた。
「ん!?」
その声に反応した直樹は視線を手元から正面に移すと、そこにはクマ魔物の姿。
しかも、いつの間にか突進を再開しているではないか。
「うわっ! こうなったら……くらえ!」
直樹はかんしゃく玉らしき謎の青玉を、クマの魔物のカラダめがけて投げつけた。
パンッ!
見事命中した青玉は、本当にかんしゃく玉のような音を立てながら弾けた。
そして、クマ魔物のカラダから『50』の黒い数字煙が出た。
「おお! ダメージ50!! 凄いぞこれ、ありがとうポブロト!!」
直樹は両手を握りしめて陽気な商人に感謝の言葉を送った。
……が、しかし。
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