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「マグゥ~」
大ダメージを受けたはずのクマ魔物は倒れることなく、平然とした表情で立っていた。
「えっ? どーなってるんだ……」
それに対して呆然と立ち尽くす直樹。
「にゃん、にゃん! にゃーん!!」
「えっ? なんだよささみ、なにが言いたいんだ……って、そうか! そういや、ダメージ与えた時の数字煙はいつも白だったのに、今のは黒。瀕死の時は赤だし、回復した時は青。数字煙の色はその効果や状態に応じて変わる……それじゃ、黒は何なんだ? あっ、もしかして……今現在のアイツのHPってことか!?」
「にゃーん!」
「おお、ささみ、やっぱそうだったか!」
ささみが「ご名答!」という意味で鳴いたのかどうかは定かでは無いが、直樹自身その推測に自信はあった。
あくまでゲーマーとしての勘ではあるが。
ただ、それが正解だとすると事態は深刻を極める。
なんてったって、直樹の魔法攻撃で相手に与えられるダメージはたったの1。
単純計算であと50回は火の玉を当てる必要がある。
どうひいき目に見ても、それまで生き延びてる可能性はゼロに等しい。
己の圧倒的優位性を自覚しているのか、クマの魔物はニヤリと笑ったように見えた。
「ふぅ。ささみよ、どうやら俺の命はここまでみたいだ。お前は何とか逃げ延びて、リビングに戻ったら香織に愛してると伝えておく──」
直樹が、最期ぐらいはカッコよく決めようとしたその時。
「出でよ、スララスやーい!」
突然、歩斗の大声が響き渡った。
「な、なんだ?」
驚いた直樹が声のした方に顔を向けると、ヘッドライトの明かりが歩斗の姿を照らし出した。
歩斗が首に巻いたチョーカーを右手で握っている様子を、クマの魔物もキョトンとした顔で見つめている。
すると、それまで無風状態だった森に一筋の風が吹き抜けた。
「呼ばれて駆けつけイムイム~!」
歩斗の目の前に、スライムがピョコンと現れた。
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