第31話 初めての召喚

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「うそ! パパ、もしかしていま攻撃しようとしてるの!?」  優衣が軽蔑の眼差しを父に向けた。 「えっ、マジ!?」  歩斗も軽蔑の眼差しを父に向ける。 「にゃーん!!」  ささみも……以下同文。 「えっ、ま、まさかぁ……ハハハハハ。ちょっとトイレに行こうと思っただけだよ……ハハハハハ……」  直樹は苦しすぎる言い訳を吐きながら、振りかざした魔法の杖をゆっくり下ろす。  そんなことなどお構いなしに、スララスとクマの魔物は楽しそうに会話を続けていた。 「このリベアロとは以前、何度か一緒にパーティーを組んでたことがあったんですイム!」  ひとしきり会話し終えたスララスが歩斗に説明してくれた。  クマの魔物ことリベアロはこの近辺エリアのボス的存在で、他の魔物たちを守るために侵入者である直樹たちに戦いを挑んだ、ということも判明。   「そうだったのか。俺たちは別に森を荒らしに来たわけじゃないんだけどなぁ。言葉が通じないっていうのは、こういう悲しいすれ違いを生んでしまうものだなぁ……」  直樹はシリアスな表情を浮かべて頭を振ってみせたが、不意打ちを仕掛けようとした直後とあってはその顔に信憑性を出すのは難しい。  それはともかく、リベアロは盟友であるスララスの仲間ということで、歩斗たちを森の出口まで送ってあげる、と自ら申し出てくれた。  勘違いだったにせよ、涼坂家のパーティーを襲ってしまったことに罪悪感を抱いているようだった。   「それはありがたい!」 「クマちゃんありがとう!」 「リベアロ、あり!」 「にゃーん!」  直樹たちから一斉に感謝の言葉を受け取ったリベアロは、さっきまでの険しい顔が嘘のように、照れくさそうな表情を浮かべていた。  そんなリベアロの先導で北の大地のある方向に向かって歩き出すと、スララスの体がスーッと薄くなっていく。 「えっ、どうしたのスララス!?」  歩斗が心配そうな顔で訊いた。 「あっ、大丈夫ですイム。たぶんリベアロとのバトルが終了したってことで、召喚の効果も終わるんだと思いますイム。では私はこれで。アユトさん、またいつでも呼んでくださイム~」  そう言い残し、またもや吹き抜けた一筋の風と共にスララスの体は完全に消えた。 「ばいばいスラちゃん」 「バイバーイ」  手を振る優衣と歩斗。  そして、淡々と進み続ける大きな熊の背中を追って歩きだした。
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