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「マグ~ウ」
それじゃ自分はここまで……と、いったように鳴き残し、リベアロは踵を返して森の中へと帰って行った。
「ばいばいクマちゃん」
「バイバーイ」
大きな背中に向かって手を振る優衣と歩斗。
ここは森の出口。
森と外の境界線を引いているかの如く、黄土色の道が左右に伸びていた。
その道を跨いだ向こう側には、緑色の草原が広がっている。
「ほら歩斗、優衣。上見てみな」
顔を上げる直樹に習って、子ども達、そしてささみも上空を見上げた。
生まれて初めて見た満天の星空に、歩斗と優衣は「うわぁ~!」と口を揃えた。
地元の夜空は、星が10個でも見えたら良い方なぐらいであり、当然の驚きだった。
「凄いなこりゃ……って、ファ~ア」
思わずあくびを漏らす直樹。
休日出勤をこなして帰ってきて、眠りについてすぐ目を覚まし、あれよあれよという間に異世界を旅することになってしまったのだから、ふいに睡魔が襲ってくるのも無理は無い。
ただ、その眠気もすぐに吹き飛ぶ。
「おお! あれは……!」
直樹は、ロフニスに描いて貰った手書きの地図を取りだし、目の前の景色と交互に見比べた。
遙か彼方に、大きな黒い山。
それは、ロフニスの地図に描かれた黒い三角形に他ならない。
涼坂家パーティーは、着実にあの北の大地へと近づいていた。
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