第32話 紫色の大地と炎の競演

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「おおおお!!」 「うおおぉぉ!」 「すごぉぉぉ!」 「にゃぁぁぁぁ!」  3人と1匹は口を揃えて、驚きと感動が入り交じった声を発した。  それは、毎年夏になると家族揃って近所の花火大会を観に行った時の光景に似ていた。  歩斗の言う超巨大なドラゴンが飛んでいる辺りから、地面に向かって斜めに巨大な赤い炎が吹き出し、もの凄く距離が離れているにもかかわらず目がくらむほど明るく輝いたのだ。   「本当にドラゴンだったのか……」  直樹が歩斗の言葉を信じる暇も無く、優衣はまた違う何かを見つけて指差した。 「地面の方に何かいる! でっっっかいやつ!!」 「なんだありゃ!? 亀か、亀か!?」  ハイテンションで驚き叫ぶ優衣と歩斗。   「か、亀……??」  直樹は半信半疑で優衣の指先の先を目で追った。  すると、ちょうどドラゴンが吐いた炎の先あたりの地上部分に、大きな何かの影が見えた。 「いや、亀じゃないだろ……とてつもなくデカいぞアレ? 亀と言うより、なんていったっけあれ……ほら、オーストラリアにある大きな岩……あっ、そうだエアーズロッ──」 「うわぁぁぁ! また出たぁぁぁ!!」  優衣の叫び通り、地上の影から上空のドラゴンに向けて、オレンジ色に輝くごんぶとの炎が吹き上がった。  そして、二つの炎は空中でぶつかると、威力が拮抗しているのか真ん中辺りでバチバチと火花を上げ続ける。  これがもし映画だとしたら、クライマックス間違い無しの迫力と映像美。  あまりの美しさについつい見とれてしまう直樹。  これを動画に収めてネットにアップしたらどれぐらいの"いいね"が貰えるんだろうか……なんてことまで考え始めたその時、手に何かが当たる感触。
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