第32話 紫色の大地と炎の競演

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「にゃーん! にゃーん!」  それは、直樹が持っているロフニスの地図に向かって飛び跳ねるささみの前肢だった。   「おいおい、どうした? あれ見て興奮したのか? ……って、そうだ」  直樹は、ささみのおかげで今一度、ロフニスの言葉を頭の中で蘇らせた。 『橋より向こうは本当に危険』  その言葉の意味は、今となっては火を見るより明らかだった。  歩斗の言うとおり、あれが超巨大なドラゴンと超巨大な亀の魔物なんてものだとしたら、北の大地の恐ろしさは想像を絶するなんてもんじゃ無い。  せめてもの救いは、それらがいる場所まで相当距離が離れている、ということだけ。  戦いの舞台は紫色の地面を左右に貫く川よりも遙か遠く。  そして、目的地は…… 「地下ダンジョンだ! ロフニスの地図によれば、〈隠れみのオーブ〉の在処は川の手前にある地下ダンジョンの中。おい、ダンジョンの入口を探すぞ!」 「うん。わかった。でもちょっと待って~」 「うん。もうちょい見てたい」 「……ぐぬぬ!」  確かに、満天の星空の下で繰り広げられる炎の競演は凄まじい美しさである。  しかし、それは人々を楽しませるために打ち上げられた花火ではなく、巨大なドラゴンと亀によるものであり、その炎の矛先がいつ自分たちに向くか分かったものじゃない……。  焦りを募らせる直樹。  とりあえず、子どもたちは放っておいて、地下ダンジョンを探し始めた。  範囲は広大だが木も何も無い更地状態だけに、地下ダンジョンに入るための扉があればすぐに分かるはずだ……と、ポジティブに考えながら辺りを駆け回った。  その意志に一人の賛同者……いや、一匹の賛同者がいた。  それはもちろん、愛猫のささみである。  ささみは、持ち前の機動力で紫色の地面を猛烈な勢いで駆けずり回った。  相変わらず拮抗し続ける炎のぶつかり合いを  すると、あっという間に見つけたのはやはりささみの方だった。 「にゃーん! にゃにゃにゃーん!」 「おお、ささみ見つけたか!!」  直樹は、飛び跳ねて鳴きまくるささみの元に急いで駆けつけると、地面に見覚えのある木の扉があることに気がついた。
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