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第33話 レヒムルの成り立ちと3つの部屋
「ねえパパ~。あの黒にゃんこなに? 敵さんなの??」
優衣が父に問いかける。
「さ、さあ……どうなんだろうね……」
父親として子供の質問になるべく答えたい気持ちは山々の直樹だが、そう返すのが関の山
涼坂パーティーは横並びになり、ユニギャットと名乗る黒猫と対峙していた。
敵らしい動きでもしてくれれば迷わず攻撃するところなのだが、手足をぶらんとさせてプカプカ浮いてるだけで、戦意がほとんど感じられない。
猫と言えばうちにも猫が……と、直樹は足下のささみの様子を伺ってみたが、黙ってジッと相手を見据えているだけ。
「ニャんだニャンだ、黙ってなに考えてるんだニャギ? 何か用があってここに来たんじゃ無いのかニャギ?」
「にゃーん! にゃにゃにゃにゃーん!」
ユニギャットからの質問に対し、すかさず答えたのは同じ猫のささみだった。
もちろん、直樹たちにはいつも通り鳴いてるようにしか聞こえなかったのだが……
「ニャギ? 隠れみのオーブを探しにきただって?」
ユニギャットは普通に答えた。
「えっ? ささみの言葉がわかるの!?」
驚きの表情を浮かべる歩斗。
まあ、ある意味猫同士なんだから当然と言えば当然なのかも知れないが、直樹と優衣も同じように驚いていた。
「ニャギニャギニャギ! 分かって当然猫と猫! それより、隠れみのオーブなら確かにこのダンジョンの中にあるニャギけど、どうして欲しいニャギ? 誰からなにを隠したいんだニャギ?」
ユニギャットは不敵な笑みを浮かべた。
どうやら、この状況を楽しんでいるようだ。
「それは……」
言い淀む直樹。
正直、このユニギャットという猫が敵なのか味方なのか全く分からない。
だが少なくとも、自分たちが探しに来たアイテムについて知ってることだけは確かだった。
だとしたら、正直に本当の事を話すのが賢明な判断なんじゃないか?
なにより子ども達も不安がってるだろうし、早く目的のブツをゲットして……と、直樹は自分の両サイドに立つ歩斗と優衣の表情をチラッと確認してみたが、2人ともやたらニヤついている。
どうやら、この状況に不安を感じてるのは自分だけだったらしい、と直樹は苦笑いしながら、ユニギャットに事の顛末をざっくり説明した。
「おお、ニャるほど。オマエら異世界からの転移者だったニャギか! これは想像以上に面白い……すぐにゼルゲゼ様にお伝えしニャギと……」
「えっ? なんだそのゼルゲゼってのは……」
とっさに出た直樹の疑問に対し、ユニギャットはヒゲをピンと伸ばし、不敵な笑みを浮かべた。
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