第33話 レヒムルの成り立ちと3つの部屋

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「ゼルゲゼ様は、このレヒムルを統べる魔王様ニャギ。そんなことも知らニャギとは──」 「いや、そもそもレヒムルっていう言葉が初耳なんだけども」 「ニャルほど。それじゃ特別に教えてあげるニャギ。っていうかどこまで知ってるのかニャギ? ロフミリアは?」 「ああ、それは分かるよ。人間の国ロフレアと魔物の国ミリゼアがあるこの世界の名前だって」 「まーそんな感じニャギ。ちなみに、遙か昔は人間も魔物もごっちゃごちゃに暮らしてたニャギ。でもあるとき対立が起きて、ニャんだかんでそれぞれ国を作って別々に住むことになったニャギ」 「へー、そーなんだ!」  元々日本史や世界史など歴史を学ぶことが好きだったため、ユニギャットの話に興味津々な直樹。  対照的に、今はバトルにしか興味の無い歩斗と優衣は、あからさまに退屈そうな表情を浮かべ、いつもはぐっすり眠っている時間なのもあって、うつらうつらし始めている。  そんなことはお構いなしに、ユニギャットは話を続ける。 「それで出来たのが人間の国ロフレアと魔物の国ミリゼア。それぞれ西の端と東の端に位置し、積極的な交流もニャいけど特別争うこともニャイっていう微妙な関係を保ち続けているんだニャギ。なんでそれだけで争うことがニャくなったかと言えば、答えは簡単。対立を嫌って争い事を無くしたい人・魔物がその国を作ったからニャギ。でも、そんな人・魔物ばかりなわけないニャギ。それじゃ、好戦的なモノはどこに行ったか……」  ユニギャットは答えが分かるか……と、挑戦的な猫目で直樹を見た。 「えっ? まあ、話の流れから言うと……ここってこと?」 「おお、正解ニャ! そう。この北の大地。好戦的な人と魔物によって作られた国レヒムルだニャギ」 「なるほど。いや、ってことは……」  直樹の頭の中に、ある疑問が浮かび上がってきた。  ロフレアとミリゼアの両国は争いを好まない人と魔物によって作られた、ってことは、ウチのリビングが見つかったところで、そもそも大事に至らずに済んだのでは、と。  そうなると、あのユセリって子とロフニスって子がでっち上げたってことか……いや、あの子達の表情や声色はとてもふざけてるようには思えなかった。  まあ、普段は温厚な人であっても、自分に対して攻撃を加えられそうになった場合はちゃんと抵抗しようとするように、得体の知れないもの、つまりウチのリビングを見つけたらなにするか分からないってのは事実なんだろう──。  すぐ横で、歩斗と優衣が完全に睡魔に負けてしゃがみ込んで眠りに落ちているのだが、それに気付かないほど直樹はユニギャットの話に集中し、疑問に対して本気で考え込んでいた。 「おい、ちゃんと話聞いてるニャギか??」 「えっ、あっ、ごめんごめん。ちょっと考え事を……って、そうだ。こう言っちゃなんだけど、好戦的なキミたちつまりレヒムルの連中は何でみすみすこの北の大地で大人しくしてるんだい? 距離が遠いわけでも無く、海に隔てられてるわけでもないのに、なんでロフレアやミリゼアに攻めて行かないのかなって……」  実際、ついさっき自分達が森を抜けてすんなり紫の大地までたどり着いたことを思い出し、直樹は不思議そうな顔つきで首を傾げた。  それに対し、ユニギャットはニヤリと笑って返す。
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