第33話 レヒムルの成り立ちと3つの部屋

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「そりゃ、すぐにでも攻め入るニャギよ! ……結界さえニャければ!」 「えっ、結界? そんなもの無かったけど……」 「ニャッニャッニャッ! 異世界からの転移者は影響を受けないからニャギ。とある大魔法使いが張った結界が遮るのは元々この世界に居た人・魔物だけニャギ。つまり、我々はこの北の大地から向こうに出る事は絶対にできニャギし、ロフミリアの民、つまりロフレアの人間とミリゼアの魔物もこの北の大地に足を踏み入れることは出来ニャいってわけニャギ。おかげで、戦いたくても戦えない退屈な日々だニャギ。最初の頃はレヒムルの者同士で争ったこともあったみたいニャけど、虚しくなってすぐにやめたニャギ。まったく、とんでもないことをしてくれたもんだニャギ」  ユニギャットは両前肢を胸の前で組み、ほっぺたを膨らませてプンプンと怒りをあらわにした。 「なるほど……よく考えられた対処法だなぁそれは……」 「まー悔しいけどそうニャギ……って、ヤツらにも誤算があったけどニャ」 「えっ? 誤算?」 「ニャギニャギ。分裂の件があるまで、この北の大地はほとんど誰も踏み入れたことが無かったんだニャギ。つまり、なにがあるのかわからニャい場所に我々を押し込めたわけだけどニャギ、未開の地だったからこそのメリットもあったニャギ。なんと、この北の大地はレアアイテムが眠るダンジョンの宝庫だったんだニャギ! オマエらが探してる〈隠れみのオーブ〉があるこのダンジョンもその1つニャギ。それはもう、ヤツらは不覚を取ったと思ってるに違いニャイはず、ニャギニャギニャギ!」  部屋に響き渡ったユニギャットの高笑いがアラームとなって、完全に夢の中だった歩斗と優衣が目を覚ました。 「むにゃむにゃ……猫の魔物発見! てりゃぁぁ!」  完全に寝ぼけ状態の優衣がピンクゴールドの剣を振り上げてユニギャットに突進。  しかし、身軽なユニギャットは闘牛士のようにスッと身を翻して受け流した。   「あ、あ……いてっ」  勢い余って足をもつらせた優衣はつまずいて転んだ。   「おい、大丈夫か優衣!」  娘を心配して駆け寄る直樹。  しかし、当の本人はケロッとしたもんだった。 「なにあの黒ニャンコ~。強いよぉ~」  そう言いながら、優衣は剣で地面を押しながらすくっと立ち上がる。   「よしっ、お兄ちゃんに任せろ~……むにゃむにゃ」  同じく寝ぼけ状態が抜けきれていない歩斗が、矢をセットした弓をユニギャットに向けた。  そして、ためらうことなく矢を放つ。  そもそも、その矢は回復の矢なんだから命中したところで意味がないわけなのだが、そんなこと知る由も無いユニギャットはまたもやするりと華麗に避けた。 「ニャギニャギ! 好戦的なのはありがたいけど、ニャレ様を倒したところでお目当てのアイテムが手に入るわけじゃ無いんだニャギ。ダンジョンに眠るお宝をゲットするためには、そのダンジョンに設定された"クリア条件"を達成しなきゃいけないんだニャギ。だから、奇跡が起きまくってもしニャレ様を倒したとしても何の意味もないニャギ」  ユニギャットは優雅にプカプカ浮かびながら、小さな両肩をすくめてみせた。   「それじゃ、どうすりゃいいんだよ!! ひひ!!」  お宝だのクリア条件だの、なにやら楽しそうな文言が耳に飛び込んできたことで、ぐいぐい覚醒し始める歩斗。   「にゃーん!」  と鳴くささみ、そして直樹も優衣も興味津々な眼差しで黒猫の答えを待った。 「ニャギニャギ! よし、じゃあ教えてニャげよう! このダンジョンの奥には3つの部屋があって、それぞれに魔物が潜んでるニャギ。魔物を倒すと鍵が手に入り、さらに奥の部屋に行くことができるニャギ。その部屋には〈三鍵の宝箱〉っていうのが置いてあって、3つの部屋にいる3体の魔物を倒して3本の鍵を手に入れニャいとその宝箱を開けることはできないニャギ」 「なるほど。じゃあ、その宝箱の中に……」 「お目当ての〈隠れみのオーブ〉が入ってるニャギ!」 「おお! それじゃ、みんなで一緒にひとつずつ部屋をクリアしていって──」  と、言いかける直樹をユニギャットが遮った。 「そんな甘くはいかないニャギ。どれかの部屋に潜んでる魔物とバトルになった瞬間、3つの部屋は厳重にロックされて、絶対外から入れなくなってしまうニャギ」 「な……なんだって!?」 「ニャギニャギ! だから、3つの鍵を手に入れるための方法はただひとつ。3つの部屋に分かれて入って、別々に魔物とバトルして勝利するしかないんだニャギ」
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