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「よし、じゃあ今度はわたしの番!」
優衣はピンクゴールドの剣をギュッと両手で持って構えると、静かに振り上げながら一歩二歩と足を踏み出した。
「とりゃぁぁぁ!」
気合いの叫びと共に、ハリガネナイトに向かって走り出す。
レベル6となった優衣のすばやさは目を見張るものがあった。
がしかし、ことスピードに関してはハリガネナイトが一枚も二枚も上手だった。
「リハ~ン」
気の抜けるような声を出しながら、まるで闘牛士がマントで牛を受け流すようにして、ハリガネナイトは優衣の突進を軽々とかわした。
「うわっ……いてっ!」
優衣は勢い余ってバランスを崩し、地面に尻餅を付いてしまった。
隙ありとばかりにハリガネナイトは優衣に駆け寄ると、ハリガネの剣による鋭い攻撃を繰り出す。
ダメージ1の白煙が優衣の体から浮かんで消える。
「もう、あっちいけあっちいけ!」
優衣は地面にしゃがみ込んだままの状態で、剣を振り回してハリガネナイトを追い払おうとした。
「リハハハッ」
ハリガネナイトはまるでダンスを踊るように優衣の剣をかわし、カウンターによるダメージ1の攻撃。
「もう、こいつ!」
優衣がむしゃくしゃした顔でスッと立ち上がると、ハリガネナイトはトンットンッと軽い身のこなしで後ろ向きに飛び跳ねて距離をとった。
「とりゃ、とりゃ、とりゃ!」
間髪入れずに攻撃を仕掛ける優衣だったが、その全てをことごとくかわされてしまう。
「もー! 全然当たらなくてつまらない~」
優衣は少し息を切らしながら、バトル中にも関わらず駄々をこねだした。
「リッハッハッハ!」
ハリガネナイトは余裕の笑みを浮かべながら、鋭い突進で優衣に攻撃を仕掛けると同時に即座に離脱、攻撃しては離脱……と、絵に描いたようなヒットアンドアウェイで着実にダメージを積み重ねた。
「ムキーッ! なにこのハリガネちょーむかつくんだけどぉ!!」
顔を真っ赤にして怒りをあらわにする優衣。
救いなのは、ハリガネナイトからの攻撃がことごとくダメージ1で済んでるという点だが、それだって塵も積もればなんとやら。
ボディーブローのようにじわじわ効いてきて、最終的には全HPが0になってダウンなんてことは優衣にも当然分かっていた。
だが如何せん相手のスピードが速すぎて、攻撃することも攻撃をかわすことも到底無理なんじゃないかと諦めかけそうになっていた。
最悪攻撃を受け続けたとしても、一発で良い。
ピンクゴールドの剣の一振りを一発でもヒットさせることができたら倒せる自信が優衣にはあった。
すばやいヤツに限って守備力は極端に低かったりするんじゃないか、ということを優衣は無意識のうちに感じ取っていたのだ。
ただ、その一発を入れるのがあまりにも難しすぎるんだけど……と、諦めかけたその時。
「……ん?」
優衣は何気なく視線を下に落とすと、地面に描かれた線の存在に気がついた。
その線は綺麗な楕円の集合体で、まるで優衣を中心して開いた花びらのように見えた。
「もしかしてもしかして……?」
あることを思いついた優衣。
改めて剣を構え、
「さあこいハリガネ!」
と、相手を挑発。
その行動は冷静に見ると怪しさ満点なのだが、余裕のハリガネナイトはそれに気付いてるのかいないのか、これまで同様ヒットアンドアウェイ攻撃を繰り出した。
そして、今まで通りダメージ1を食らった優衣だったが、その目は何かを確信したように光輝き、口元をニヤリとさせて不敵な笑みを浮かべていた。
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