第36話 経験値稼ぎとミニミニドラゴン大家族

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 そしてまた、鉄球虫の攻撃。  歩斗が回復の弓矢を放つ。  スララスの攻撃。  数匹の鉄球虫をやっつけたが、今度はレベルアップ隊は来なかった。  そしてまた、鉄球虫の攻撃。  歩斗が回復の弓矢を放つ。  スララスの攻撃。  数匹の鉄球虫をやっつけ……レベルアップ隊参上!」 「スララスさんのレベルが4にアップしました~!」 「すげぇ、どんどんレベル上がっていく!」 「ふふふイム!!」  そして、また鉄球虫の攻撃……なのだが。  ダメージ煙の数字は……0!  なんと、順調にレベルを上げていき、防御力の上がったスララスに対し、鉄球虫の攻撃が全く通用しなくなったのだ!  さすがに、ずっと高みの見物で見守っていた鉄球ボウヤも焦ったのか、ダムダムとバウンドするスピードがどんどん早まっていく。  その間も、スララスはひたすら鉄球虫に体当たり攻撃を食らわせ続けていた。  もはや相手からは一切のダメージを受けることが無いということで、完全にスララスの無双状態。  レベルアップ隊も大忙しで、ついにレベルは6にまで上がったスララスは、〈相手をふやけさせる粘液スキル〉を会得していた。   「そ、それは……!? かくなる上は……マタマタマタァァァ!!」  鉄球ボウヤは今まで以上の激しい勢いで地面でバウンドすると、天井まで跳ね上がり、天井にぶつかった勢いで地面に落ち、天井、地面、天井、地面……と、バウンドは猛烈なスピードまで加速していった。 「スララス、さすがにそれはヤバ──」  歩斗が叫ぶよりも早く、バウンドのループから抜け出した鉄球ボウヤの体は、さながら弾丸のような勢いで一直線にスララスへと向かって発射された。  そして、あっという間にスララスの体に直撃。 「イムゥゥ!!」  悲鳴を上げるスララスの体からは瀕死を示す赤煙が出た。  ……が、しかし。 「ニヤリ……イム」  不敵に笑ったスララスは、頭のトンガリを鉄球ボウヤに向けた。  全てのエネルギーを注いだ攻撃を繰り出した鉄球ボウヤは、ゼェゼェと息を切らし、バウンドする気力も無いといった様子でただ地面にポトリと落ちたままでいた。  スララスのトンガリからヌルヌルっとした粘液が飛び出し、鉄球ボウヤの体を包み込む。 「な、なんだこれはマタ……!?」  焦る鉄球ボウヤ。   「これで……終わりイム!!!」  スララスは勇ましい掛け声と共に大きく飛び上がると、粘液をまとってヌメヌメ状態の鉄球ボウヤに狙いを定め、そのまま勢いよく落下。   「グフォェマタァァァァ!!」  スララス会心のボディアタックが見事に命中!  レベル6になって会得した〈相手をふやけさせる粘液スキル〉の効果により、大幅に防御力が下げられていた鉄球ボウヤを見事撃破!  今までは"簡易バージョン"で祝っていたレベルアップ隊も今回ばかりはノリノリで登場し、全力で陽気な音楽を奏でた。  ズッチャ、ズッチャ。  シャン、シャン、シャン♪  ズッチャチャ、ズチャチャ。  ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪ 「スララスさんのレベルが7にアップしました! そして、バトルの勝利おめでとうございます!!」    リーダーがハイテンションで祝福の言葉を叫べば、メンバーはみな音楽をかき鳴らしながらスララスと歩斗の勝利を大いに盛り上げ、そのままどこかへと消えて行った。 「やったぜスララス!」 「はいム!! あっ、アユトさんこれ」 「おお! ありがとう!!」  歩斗は、勝利報酬の〈宝のカギ〉をスララスから受け取った。   「ではでは、無事にバトルが終わったんで帰りますイム~。アユトさん、またイム~!」  そう言い残し、またもや吹き抜けた一筋の風と共にスララスの体は完全がスーッと消えた。 「またよろしくね~」  歩斗は手を振りながら鉄の扉が開いていた出口を抜けて、優衣の待つ宝箱の広間へと向かった。
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