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「もしかして……!」
直樹は直感で、その白銀のリングを魔法の杖にはめてみた。
すると、杖が一瞬ボワンと白く輝いた。
それを見て、全くの見当違いでは無いと確信した直樹は、迫り来る子供ドラゴンに向けて魔法の杖を振りかざす。
ボワボワボワワワワン!!
なんと、いつも飛び出す1つだけの火の玉では無く、横長に広がる大きな火の塊が飛び出し、まるで波のように子供ドラゴンたちに襲いかかった。
「うわぁぁぁ!」
「あつあつあつぅぅぅ!」
「ひぃぃぃ! あついよ~!」
火の波を浴びた子供ドラゴンたちの悲鳴が飛び交う。
「えっ……うそっ、これって……範囲攻撃になったってこと? っていうか、なんか君たちごめん」
直樹は、敵とは言え、ドラゴンとは言え、泣き叫ぶ子供たちの姿に罪悪感を覚えずにはいられなかった。
ただ、直樹が見つけだしたアイテムは、間違いなく起死回生を生み出すほどの力を持っている。
ゲームでも何でも、とにかく範囲攻撃ってものの威力は絶大。
しかも、今回のバトルのように多勢相手にはうってつけ、最高のチョイスだった。
間違い無く劣勢をひっくり返せるほどの……。
「くそぉ……って、そうだ。何を悩む必要があるっていうんだ」
直樹は子供ドラゴンの姿に、歩斗と優衣を重ね合わせた。
別のバトル部屋では、歩斗たちが攻撃を受けて苦しんでるかも知れない。
なのに、俺がここで情にほだされて攻撃の手を緩めてどうする。
それにこれは殺し合いじゃなくてバトル。
しかも、ポブロトが言うにはHP制度の下では例えHPが0になっても瀕死状態になるってだけ。
だからここは、非情に徹して戦うのみ!
直樹は決意に満ちた目で、範囲攻撃のリングをはめた魔法の杖を振り上げた。
と、その時。
「ちょっと待った!!」
そう叫びながら、直樹の前に飛び出してきたのは父ドラゴンだった。
「バトル中になにを言ってるんだ、と思われるかもしれないが、子ども達が泣き叫ぶ姿を私はこれ以上見ることは出来ない……! だから人間よ、私とタイマン勝負で決着を付けてはくれまいか? バトルの勝利を賭けて!」
父ドラゴンは感情のこもった表情で訴えかけてきた。
一見すると、多勢に無勢の直樹にとっては有利な条件にも思える。
しかし、範囲攻撃を手にした今となっては、タイマン勝負イコールそのアドバンテージを活かせなくなるということになるのだが……
「よし、良いだろう! 父親同士、タイマン勝負で決着を付けよう!」
直樹は快諾。
なぜなら、なんだかんだ言って子供ドラゴンに攻撃せずに勝つ方法があるのなら、その方がありがたいと思ったから。
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