第37話 まだまだまだ

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「にゃにゃーん!」  勢いよくジャンプしたささみが狙いを定めたのは、黄色く輝き続ける父ドラゴンの右後ろ脚。  野性の勘が働き、無意識にピンポイントで弱点を狙い撃ちしたのだった。 「ウ……ウヒィィィィィラゴォォォオンンン!!」  ささみによる会心のひっかき攻撃が炸裂し、父ドラゴンの激しい悲鳴がバトル部屋を震わせた。 「おお! ささみナイス!! って、ちょっとまあアレだけど……」  直樹は、喜び半分、戸惑い半分だった。  気絶していてタイマンバトルのことなど知らなかったささみはもちろん何も悪くないのだが、結果的にそのルールを破ってしまったからである。 「あなた!!」 「うぉぉぉ! いてぇぇぇぇぇ!!」  父ドラゴンの痛がりっぷりの壮絶さよ。  恐らく、古傷といったところか……と、直樹は思っていたのだが── 「うぉぉぉ! いてぇぇぇ! 今朝、ダンジョンの角にぶつけた小指がいてぇぇぇ!」 「あなたぁぁぁ! あなたの小指がぁぁぁぁ!」 「……小指!? ダンジョンの角!?」  心配して損した!  と、直樹は心底思った。  しかし、それとタイマンルールを破ってしまったことは全く別物。   「えっと、なんかすみません……」  直樹は苦しむ父ドラゴンに歩み寄り、素直に謝った。  すると。 「なに言ってんだ……いてててて! 最初にタイマン破ったのはウチの母ちゃんだし、そっちはなんも悪くねぇよ……いてててて! ってことで、ほらこれ」  父ドラゴンは小指の痛みと戦いながら、〈宝のカギ〉を直樹に渡した。 「えっ、いいの……??」  戸惑う直樹に父ドラゴンは、 「ほら、さっさと行けって! 負けでも何でもいいからこちとら早くバトル終わらせて、小指を氷で冷やしたいんだよ!」  と、ぶっきらぼうに言い放った。 「じゃあ、ありがたく受け取ります! お大事に!」 「にゃーん!!」  こうして、直樹も無事、バトルで勝利を収めることができたのであった。
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