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「よし、いっせーのせで差し込むぞ!」
「うん!」
「おー!」
「じゃあ……いっせーの、せ!
直樹の掛け声に合わせて、3人は自分が勝ち取ったカギを宝箱の鍵穴に差し込んだ。
すると、箱の蓋がパカッと開く。
「こ、これが……」
「おお!」
「うわぁ!」
宝箱の中には、吸い込まれそうなほど真っ黒な玉が入っていた。
それこそが、ここまで探し求めていた〈隠れみのオーブ〉。
「ニャギニャギニャギ! まさか本当に3勝しちゃうとはニャギニャギニャギ!」
ユニギャットは悔しいというよりは、なぜか楽しそうな目をして高らかに笑っていた。
「あっ、あなた! アユ! ユイ! ささみ! お帰りなさい!!」
リビングの窓際でお茶の入ったマグカップを床に置き、週刊誌を見ながらたまに外の様子を確認していた香織の目に、帰還する家族の姿が飛び込んできた。
「ねえ、どーだった? その、何とかオーブみたいなのは見つかったの??」
みんなが無事に帰ってきてくれたことで、興奮状態になっていた香織が直樹に問いかける。
「あ、うん、これ……」
直樹はポケットから無造作に〈隠れみのオーブ〉を取りだす。
「わぁすごい! これで、もう安心ってことなのよね!?」
「うん、そうだよ……ふぁ~あ」
直樹は、あくび交じりに答えた。
致し方ない。
あんなに暗かった夜空は、徐々に白みがかることで朝の訪れを告げていた。
休日出勤で帰ってきてから、ろくに睡眠時間を取ることもできずに異世界冒険。
そして、ミニミニドラゴン大家族との死闘を演じてきたのだから。
「ふぁ~あ」
「ふぁ~あ」
「にゃ~あ」
歩斗と優衣、そしてささみもほとんど似たようなもので、地下ダンジョンのバトルでは見事に勝利を収めたものの、襲い来る睡魔には完全白旗状態だった。
「ふふっ、みんなお疲れ様。ほら、早くベッドに入ってゆっくりお眠りなさい」
「ああ……」
「うん……」
「むにゃむにゃ……」
「にゃむにゃむ……」
こうして、半分眠りに落ちた状態の冒険者たちは、ゾンビのようにフラフラとした足取りでリビングを抜けて各自のベッドを目指して歩いた。
その背中に向かって、香織が声をかける。
「あ、そうだ。みんな、手洗いだけはちゃんと忘れずに!」
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