第3話 魔法の杖のようなもの

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「……パ~。……パパ~、こっちこっち!!」  左斜め後ろ辺りから優衣の声が聞こえた。 「お、おう!! いま行く! 動くなよ!!」  直樹は声がした方向にライトを定めるや否や、すぐに走り出す。  ただでさえ運動不足気味な上、サンダルによる土の上での全力疾走はちょっとした拍子で足をグネらせそうな恐怖があったものの、ここでまた見失ったりなんかしたら後悔してもしきれないぞと、無我夢中で足を動かす。  そのおかげで、あっという間に声の元にたどり着いた。 「おお、優衣! 歩斗も! 大丈夫だったか!? よしよし、ほら、よしよし」  直樹は子ども達の姿を見つけるなり、駆け寄って思いきり抱きしめた。   「う~、パパくるしいよぉ~」 「マジやめろ~」  直樹にとっては感動の再会であり、子供たちを両手で思いきり抱きしめる。  だが、実際は時間にしてほんの数分程度の別れだっただけに、父と子の間には多少温度差があるようで、2人揃って体をくねらせて両腕から抜け出してしまった。 「なんだよなんだよ、もう少し感傷に浸らしてくれても……って、ん? これなんだ?」  直樹は、2人が居た場所のすぐ近く、どっしりと立っている太い木の下に何かが置いてあるのに気付いた。 「宝箱だよパパ! ねーお兄ちゃん?」 「うん。どう見ても宝箱じゃん。パパ大丈夫? 年取っちゃうと暗いとこ見づらくなっちゃうの?」 「そうそう、夜になると家に帰ってくるだけでも一苦労……って、おい! 箱っぽいことはパパだって分かるって。でも、なんで宝箱だって思うんだ?」  直樹は改めて木の下に置いてある箱に目をやった。  ……明らかに宝箱じゃないか。
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