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「やだ、こんな所にこんなものがあったの?」
ボブスライムを追ってたどり着いたのは、異世界に転移した“半分涼坂家”からほど近い場所。
そこにあったのは、真っ白な筒状の塔。
自分が見つけましたー!
と言わんばかりに、ボブスライムが香織にドヤ顔を向けながらピョンピョンと上下に跳び跳ね続けていた。
「今まで全然気付かなかったわぁ」
好奇の目を向けながら、香織はゆっくりと塔の回りを一周してみた。
外壁は大理石のような質感で、1階部分には鉄の扉と3つの窓、それより上の階(と言っても恐らく4階程度)には前後左右に等間隔で窓が4つ。
決して高い建物とは言えないが、存在感は十分。
こんなに家から近いのに、何で今まで気付かなかったんだろう……と、香織は小首を傾げながら扉の前で立ち止まる。
「ねえスラちゃん、ちょっと中に入ってみちゃおっかな?」
跳びはねながら付いてきていたスライムに向かって問いかける。
「イムゥ……」
ずっと楽しげだったボブスライムの表情が少し曇った。
「あら、やめといた方が良いかな? うーん……ちょっとだけ!」
おっとりしてるようで意外と冒険心を隠し持つタイプの香織は、「ごめん下さーい」とまるで近所の知り合いの家にでも訪れかのように、ゆっくり扉を開いた。
中は薄暗いものの、意外と埃やかび臭い匂いなどは無い。
「イムイムゥ……!」
背後から聞こえるボブスライムの心配そうな声に対して「はいはい、ちょっとだけだからね~」と返事をしながら、香織やゆっくり塔の中へと足を踏み入れた。
……と、その時。
バタンッ!!
もの凄い勢いで扉が閉まる音。
「えっ?」
外からの光が完全に遮断され、さすがに焦りながら後ろを振り向く香織。
そこに見えたのは、閉じきった扉。
手で押してみても微動だにしない。
「あらぁ……どうしましょ」
怪しげな塔に閉じ込められた香織だったが、自分の事より、もうすぐ帰って来る子ども達が家の鍵を持っていたかどうかの方が気になっていた……。
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