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「そういやユセリ大丈夫か? さっきまでそこに変なヤツが……っていうか、そいつのせいでここに閉じ込められたんだけど、キーッ!!」
「変なヤツ?? 誰も居ないけど……」
ユセリは周りを確認してるのか、少し間をあけてから続けた。
「うん、とりあえず今は大丈夫そう」
「ホントに? どっか隠れてるだけかも知れないし、油断するなよ!!」
扉越しに真剣な眼差しを送る歩斗。
「ありがと! 自分がそんな目にあってるっていうのに、私のことそんな心配してくれるなんてさ……」
もしこの扉に窓が付いてたらユセリの照れる顔が見えるに違いない、と歩斗が思えるぐらい、彼女の声は赤く染まっていた。
そう考えると自分で言っておきながらなんか恥ずかしいな……と照れくさくなった歩斗は話の矛先を少しだけ巻き戻す。
「えっと、そのボブスラは大丈夫だったの?」
「あ、ああ。ちょっとケガしてるみたいだったけどすぐに治ると思う。それよりアユトのママがこの塔に閉じ込められたって興奮気味に話してて」
「うわっ、ボクと同じってこと? ……えっ、そんじゃ母さんもここに!?」
ハッとして部屋の中を見回してみたが、外壁と同じような質感の壁と床が薄暗く見えるだけで母の気配は一切無し。
外から見る限り少なくとも2階や3階はあるはずなのに、階段すら見当たらない。
なんなんだよもう!
あの蒼白いヤツ!
こんな良く分からない塔の中に誘い込んで鍵閉めやがって……と、心の中で叫ぶ歩斗の顔がハッとなった。
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