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第41話 魔法陣鍵ミッション
「ねえ、大丈夫??」
ふいに言葉を途切らせた歩斗を心配するユセリの声が、扉を越えて塔の中に薄ら響き渡る。
「……あっ、うん、大丈夫だよ! なんか変な声が聞こえたような気がして──」
「ちょっとアユ、母親に対して『変な声』って失礼じゃない?」
「うわっ! で、出たぁ~」
聞こえるはずの無い声が再び聞こえて驚く歩斗。
いや、そもそも香織を探すために入ってきたのだが、暗い部屋に閉じ込められていることで若干冷静さを失っていた。
「もうアユったら、人を幽霊扱いしないでちょーだい。今度焼きそば作る時、アユの分だけニンジン3倍にしちゃうわよ?」
「えー!? それはヤダ~……って、もしかして本物?」
現実感に満ちた言葉を耳にしたことで、はからずも冷静さを取り戻す歩斗。
どうやら声の出所は足下。
ちょうど2つ目の魔法陣があった地面の下から聞こえて来た。
「幽霊なわけ無いでしょもう」
「ごめんなさい! ってか、何でそんな所に居るの??」
歩斗は地面に向かって語りかけた。
「ねえ、誰と喋ってんの??」
扉の向こうからユセリの声。
「あっ、ごめんごめん! 急に幽霊……じゃなくて母さんが喋りかけてきたから」
「うそっ? 見つかったの?? 良かった~!!」
「いや、見つかったっていうか、見つかってはいないっていうか……」
「ねえアユ、お友達と一緒なの?」
「いや、一緒っていうか、一緒ではないっていうか……」
「ねー、ちゃんと教えてよー!」
「ちゃんと説明してちょうだい」
「……ひぃぃ!!」
歩斗はまるで嫁と姑に挟まれる夫のような板挟みに遭い……なんて風にはさすがに思わないものの、自身も塔の中に閉じ込められているという状況も相まって頭がパンクしかけてしまった。
がしかし、6年生になった事で少しだけ大人になったのか、すぐに冷静さを取り戻し、それぞれにざっくりと今の状況を説明し始めた。
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