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第42話 毒多島と10体の魔物
「うひゃっ! き、君は誰!? どこから来たの??」
背後から綺麗に裏返った声がしたが、歩斗に一瞬でも振り向く余裕は無い。
なぜなら、正面に並ぶ10体の魔物がどいつもこいつも自分に向かって睨みを利かせているのだ。
10体の姿形は様々だが、その色はどれも毒々しい紫色。
スライムっぽい奴もいれば、鳥のように翼を羽ばたかせてホバリングしてる奴もいたり、ヘビのようにニョロニョロと地面を這ってる奴もいる。
「ちょっ、どーなってんのこれ!?」
前を見据えたまま叫ぶ歩斗。
目玉だけ右に左にキョロキョロ動かしてみるが、知ってる景色はゼロ。
分かる事といったら、ここがまったく見知らぬ土地であるという事ぐらい。
この草原は高い丘の上にあるみたいでやたら見晴らしが良く、遠くの方には海の端っこと思しき青色も見える。
そう言えば、少し前にユセリから『ここ(半分涼坂家近辺〉からずっと南には大きな海が広がってるんだよ』なんて話を聞いたことがあったっけ……なんて歩斗が思い出を引っ張りだそうとしたその時。
「ムラドォォォォ!」
10体の内の1体、小さな鳥のような魔物が甲高い叫びを上げながら歩斗に向かって襲いかかって来た。
「うわっ、いきなり来るの!? ちょっ……えいっ!」
歩斗は焦りながらも条件反射的に弓矢を手に取り、鳥タイプの魔物に狙いを定めて矢を放った。
ヒューン……スッ。
「あっ、ミスった!」
それは、鳥タイプの奴が巧みに翼を動かして矢を避けたから……では無い。
歩斗は相変わらず回復の弓矢しか持っておらず、明らかに今のは無駄撃ち。
「惜しい~!!」
後方から聞こえるのは、事情を知らない青年の悔しがる声。
そして、前方からは鳥の魔物が急接近。
「結局ボクが頼れるのはこれっきゃない! 出でよスララスやーい!」
歩斗は首に巻いたチョーカーを手で触れながら勇ましく叫んだ。
穏やかな草原に一筋の風が吹き抜け、
「呼ばれて駆けつけイムイム~!」
と、陽気な声と共に歩斗の頼れる相棒スララスが姿を現した。
「歩斗さん、ちーっすイム!」
「スララスちーっす!」
歩斗が高々と上げた右手に向かって、スララスがピョーンとジャンプしてハイタッチ……いや、ハイスラタッチをした。
さらにスララスは驚くべきことに……。
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