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「スララスナイス!」
「イムイムゥ~!!」
歩斗に褒められ、誇らしげに口角を上げるスララス。
レベル12は伊達じゃ無い。
対する“魔物軍団”は思わぬ迎撃力を目の当たりにして警戒心を強めたのか、地面に倒れたままの鳥魔物を中心に円陣を組み、作戦会議を始めていた。
未知なる場所へ飛ばされた歩斗に初めて余裕が生まれ、ずっと気になってた声の主を確認するためにチラッと後ろを振り向いてみる。
「ど、どうも~。いやぁ、凄いっすねぇ~!!」
そこに居たのは明らかに歩斗より年上の青年。
これといって特徴の無い布の服を身にまとう本人自身も、いたって普通の青年といった面持ち。
「えへへ、そうかなぁ……って、凄いのはスララスか。ねえそれより、ここどこ??」
歩斗は、とにかく一番気になる質問を投げかけた。
ほんの少し前まで居たあの塔の一室とは丸っきり逆、閉塞感のへの字も無い開放的なこの草原は一体……。
「ここは〈毒多島〉! 知らずに来たの??」
不思議そうに小首を傾げる青年。
歩斗は魔物軍団の方へチラチラと視線を送り、まだ会議中なのを確認してから続けた。
「ぜんっぜん! 何もかもさっぱり分からないんだけど! お兄さん……いや、おじさん? はなんでここにいんの?」
「お、おじさん……!? ま、まあいいや、僕は〈毒消し草〉を採りにここへやって来たんだ。ここは毒消し草の宝庫だからね」
爽やかに答えるおじさんもとい青年。
「君もてっきり同じだと思ったんだけど、違うの? もしかして、ただバトルがしたくてやって来たとか??」
「うん、毒消し草には全然興味ないけど、バトルしに来たわけじゃ……あっ、そう言われてみるとそうかも」
歩斗は魔法陣鍵の下に浮かび上がった『魔物10体討伐(難易度E)』という言葉を思い出していた。
呪文を唱えながらその魔法陣に触れた直後、眩しい光に包まれてこの草原に転移。
目の前に10体の魔物。
と言う事は……。
「あれを全部倒せば魔法陣の鍵を開けることが出来るってわけか!」
歩斗はニカッと笑いながら両手をパチンと叩いた。
難しい算数の問題がスルッと解けた時のような爽快感。
それを感じ取ったのか、スララスも「イムイムゥ~」と嬉しそうな表情を浮かべながら、歩斗の足下にプルルンボディをスリスリする。
澄み渡った青空のように爽やかな空気に包まれる中、青年の顔は何故かどんよりと曇っていた。
「ねえ君……」
「ん? なに?」
「魔物とバトルをしにやってきたとか、もしかして悪者じゃないよね?」
「えっ? 悪者!? ううん、違うよ! ボクはヒーロー……ってわけでも無いけど、地下1階に閉じ込められた母さんを助けに来たんだし」
歩斗は戸惑いながらも素直に答えた。
「えっ? 母親を助けに?? って、それじゃ……僕と同じじゃないか」
青年は歩斗の言葉を聞いて警戒心を緩めたものの、その顔はまだ曇ったまま。
「同じ? ってことは、おじさんもおじさんの母さんを助けるためにここに来たってこと?」
「ああ、そうだよ。僕の母親は悪者に騙されて〈ポズニティ病〉というとんでもない病気にかかってしまったのさ」
「ポズニティ? ちょっと良くわかんないけど……」
「うん。僕も母親がかかるまで、そんな病気なんて存在すら知らなかったから。どんなに体を休ませても、ずっと毒状態から回復する事がないというとんでもない症状の事も……」
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