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第43話 ハート型の毒消し草とケリッツ
現代世界にも“毒”は存在するが、この異世界における“毒”の場合その性質は少々違いがある。
毒に感染し“毒状態”になると体が弱っていく……という点は同じだが、現代世界の場合その症状は赤く腫れたり斑点が出たり、熱が出たりお腹を壊したりと多岐にわたるのとは違い、こっちの世界では“紫色の数字煙が出てHPがどんどん減っていく”という一点のみ。
毒の種類によって数字の大きさや煙の出る間隔、出続ける時間に違いがあるものの、薬草や回復魔法などでHPを増やさなければ命に関わるという点は共通している(それに関しては現代世界の毒も同じ)。
毒は安静にして一定時間経過すれば自然と消滅するケースがほとんどだが、毒消し草や毒消し魔法を早く使うに越したことはない。
ただ、中にはそれらを使っても治らない恐ろしい猛毒もあったりする……と、ユセリから教えて貰った時、歩斗は「ひぃぃぃ!」と心から悲鳴をあげたものだが、いま目の前に居る青年の家族がその状態だと聞いて、さらにその恐ろしさが現実味を帯びていた。
「あっ、ごめんね! 初めて会った相手……しかも、君みたいな子供にこんな話しちゃって」
青年は申し訳なさそうに微笑んだ。
歩斗は、そんな謝らないで、とばかりに全力でブルブルと顔を横に振りまくった。
それに合わせて足下のスララスもブルブルと体を振り続ける。
「そんじゃ、とにかく毒消し草がいっぱい必要ってこと?」
「そだね! 両手いっぱいに抱えて持ち帰るつもりだったんだけど……」
作戦会議に熱のこもる魔物の群れを見やりながら苦笑いする青年。
「だったら、ボクと同じだね!」
「えっ? どういうこと??」
「とにかくあの魔物を全部倒せば良いってことでしょっ!」
歩斗はニヒヒと笑いながら右左とワンツーパンチをして見せた。
「頑張りますイム!!」
スララスも負けじと右左と肩(?)でワンツーパンチを繰り出す。
「……そだね! あっ、遅れちゃったけど僕の名前はケリッツ。今さらだけどよろしくね!」
「おう! ボクは歩斗。よろしくぅ~! あっ、こいつはスララス!」
「イムイムゥ!」
ペコリとトンガリ頭を下げるスララス。
「どうも! って、アユト君はスライムさんと旅してるの?」
「いや、旅じゃなくて魔法陣なんちゃらの途中で……と、とにかく、今はアイツらを倒す作戦を練らないと!」
まだこの状況について完全に把握しきれていない歩斗は微妙にごまかしつつ、自分なりにどう戦えば良いか考えてみることにした。
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